第7章 地獄の食卓私が変えます!
闇鍋地獄、洗濯地獄、アイロン地獄と改革を重ねた私は、次なる業務地へと足を踏み入れた。アゼルの案内で辿り着いたその場所は、重たい鉄扉の奥に広がる、蒸気と焦げ臭さに満ちた空間だった。
「ここが……料理地獄?」
私は思わず眉をひそめた。厨房と呼ぶにはあまりに荒れ果てたその場所では、亡者たちが黙々と調理を続けていた。だが、その様子は“料理”とは程遠い。
調理器具は錆びつき、鍋の底は焦げ付き、包丁は刃こぼれしている。食材は腐敗し、色も匂いも異常だった。レシピは壁に貼られていたが、手順は支離滅裂で、意味を成していない。
亡者たちはその無意味な指示に従い、腐った食材を煮詰め、焼き焦がし、異臭を放つ料理を延々と作り続けていた。そして出来上がった料理を陰鬱な顔で、黙々と食べている。
「……これが、料理地獄?」
私はもう一度問いかけるように呟いた。
アゼルは厨房の奥を見つめながら、静かに答えた。
「罪の献立を煮詰め、苦しみを味わう儀式だ。食材は過去の記憶、調理は償いの工程。食べることは贖罪。焦げた料理は、歪んだ心の象徴だ」
私は焦げた鍋の中身を見つめながら、首を振った。
「これじゃ、ただの食材虐待だよ。罪を煮詰めるって言うけど、腐った材料で焦がすだけじゃ、何も整わない。苦しみだけが残って、自分の罪と向き合えないただの苦行だよ。」
アゼルは言葉を詰まらせ、黙って私の横顔を見つめていた。
私は厨房の中央に立ち、手を腰に当てて言った。
「よし、まずは冷蔵庫の点検と鍋の洗浄から。罪の味を整えるなら、衛生と誠意が基本でしょ?」
私は厨房の中央に立ち、まずは冷蔵庫の扉を開けた。中からは、腐敗した野菜と異臭を放つ肉が現れた。色も形も原型を留めておらず、食材というより“罰の塊”だった。
「……これ、食材って呼んじゃダメでしょ」
私は鼻をつまみながら、使えるものと使えないものを分け始めた。アゼルが少し驚いたように言う。
「君、料理もできるのか?」
「うん。バイトのない日は私が食事係だった。お弁当も自分で作ってたし……メニュー決めて、買い出しして、下ごしらえして……って、地獄より忙しかったかも」
私は笑いながら、錆びた鍋を洗い、包丁の刃を研ぎ直した。亡者たちは戸惑いながらも、私の動きをじっと見ていた。