第5章 地獄の洗濯場を改革します!
アゼルは淡々と言ったが、私は納得できなかった。
「苦しみって……これ、ただの徒労じゃない。汚れが落ちないなら、罪と向き合うこともできないよ!
終わりのない作業は、確かに神経をすり減らして“刑罰”にはなるかもしれない。
でも、達成感のない作業は、ただの苦痛でしかなくて、何ひとつ報われないんだよ?
そんな作業を延々と続けさせたら、転生する前に神経衰弱起こしちゃうよ!
それに、汚れたものをきれいにする実感を得てこそ、初めて自分の罪を見つめ直して、反省することができるんじゃないの?
“罪を洗う”って、そういう趣旨だと思うんだけど……違う?」
私の言葉に、アゼルは言い返すことができず、口をつぐんだまま何かを考え込んでいた。
私はもう一度、濁った水を見つめる。そこには、何も映っていなかった。
自分の顔すら、見えないほどに。
「これじゃ、罪どころか、自分の姿すら見えないよ」
私は濁った水を見つめながら、ぽつりと呟いた。アゼルは何も言わず、少しだけ視線を下におとした。
その沈黙を破るように、私は腰に手を当てて言った。
「よし、まずは水から!この洗濯場、フィルター壊れてるんでしょ?直すよ!」
「待て、勝手に機械をいじるのは——」
「勝手じゃない。改善よ!」
私は洗濯場の隅に積まれていた工具箱を見つけると、迷いなく手を伸ばした。亡者たちがざわつく。アゼルはため息をつきながらも、工具の使い方を簡単に説明してくれた。
フィルターの蓋を開けると、そこには泥と血の塊がびっしり詰まっていた。私は顔をしかめながらも、ゴム手袋をはめて一つ一つ取り除いていく。
「うわ……これ、何年分の汚れ?」
「地獄に年数の概念はないが……長いこと放置されていたのは確かだな」
実は一人暮らしのせいか、こう言う生活器具の修理は結構手馴れてる。
私はフィルターを洗い、配管を通し直し、循環装置を再起動すると、濁った水が少しずつ澄んでいく。亡者たちが驚いたように水面を覗き込む。
「……顔が、映った」
誰かがそう呟いた。
私はにっこり笑って言った。
「でしょ?罪を洗うって、自分の姿を見つめることから始まるんだよ」
その後、私は手動式の洗濯機にも目をつけた。回転軸が歪み、排水口が詰まっていた。アゼルが工具を渡してくれると、私は慣れた手つきで分解を始めた。
