第5章 地獄の洗濯場を改革します!
――翌日。
闇鍋地獄を変えた私は、次なる仕事場を探すべくアゼルの職務室へ向かった。
部屋に入ると、かつて雑然としていた空間はすっかり片付き、書類は整然と並び、傾いていた棚もしっかりと立て直されていた。換気もされているのか、空気は以前よりずっと澄んでいる。
「よーし、現状維持! 現状維持!」
私は満足げに声を上げた。すると、アゼルが書類から目を離し、こちらに視線を向ける。
「今日は何をするんだ?」
「とにかく『黒の世界』は、衛生面が良くないから、そこを変えたいんだよね。不潔は万病の元ってね!」
私は自分の格言を口に出して、腰に手を当て胸を張った。
そんな私を見て、アゼルはなんだか楽しそうに喉の奥で笑った。
そして、何か思案する様に考えこむと、唸るように
「衛生面か……じゃ、洗濯地獄にでも行ってみるか?」
と、口に出した。
「洗濯……って、地獄にもあるんだ」
「あるとも。罪を洗い流す、という意味でな」
案内されたのは、岩壁に囲まれた広い洗濯場だった。空はどんよりと曇り、風は湿って重い。そこには、無数の亡者たちが並び、巨大な洗濯桶に手を突っ込んでいた。桶の中には、血と泥にまみれた衣類が沈み、濁った水がぬるぬると波打っている。
亡者たちは無言で、ただひたすらに衣をこすっていた。水は茶色く濁り、泡立ちもせず、悪臭が鼻をついた。
「……これ、洗ってるっていうより、汚れをなすりつけてるだけじゃない」
私は眉をひそめて、桶の中を覗き込んだ。底が見えない。水は循環しているようだったが、フィルターは詰まり、機械の音もどこか怪しげだった。
「これ、フィルター壊れてるよね?」
「まあ、そうだな。だが、これは“罪を洗う儀式”だ。苦しみがなければ意味がない」
アゼルは淡々と言ったが、私は納得できなかった。