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天狐あやかし秘譚

第87章 侵掠如火(しんりゃくじょか)


「急急如天帝 太上老君より遣わされし
 その律令に従わん!」

悪鬼滅殺 刀禁術

キィィン

澄んだ金属音が響き渡り、目の前のカダマシの巨体に幾筋もの光の斬撃が降り注ぐ。

空を踊るように黒い人影が、斬撃を繰り出していく。
その斬撃で切り裂かれたカダマシが、ぐらりと身体を傾けるが、倒れる寸前のところで、ドン、と右足を踏みしめ、堪えた。

「な・・・何だ!貴様!!」

人影が剣を肩に担いでその巨体を見上げた。
その姿・・・この人って・・・!?

「いったい・・・なんで・・・」
空から?と言おうとした時、私の耳に、別の声が響いてきた。

「きゃあああああああ!」
「こ・・・これは無理があるのですぅ!!」

上を向くと、パラシュートが更に三つ、空から降りてきていた。声から察するにひとつは瀬良、ひとつは土門のようだった。

あと、ひとつは無言で降りてきているし、まだかなりの距離があるのでよくわからない。

「くそお!」
ぐらりと、カダマシの巨体が動いた。大きい図体なので、一挙手一投足で地面が揺れる。将軍剣の斬撃のダメージが早速に回復してきたのか、ギロリと土御門を睨みつけてきた。

「なんだあ!テメエ!」
地に響くような咆哮を上げると、こちらを踏み潰そうと、足を上げてくる。

「名乗ったやろ?なあ?・・・大鹿島はん?」

大鹿島さんって・・・あの、祭部の?

「五方主呪咀君 我請い願う
 執法・収法・門法・推法・除法・散法・滅法・八部将軍・威光照見
 その力もてここに降りたちて 千の災い万の邪を退けよ・・・」

呪言がカダマシの後ろから響く。その声に気づいて、彼が後ろを振り返るより速く、呪言の結句が発声された。

『水公・歳刑神連鎖縛』

大地から青く光る水色の綱のようなものが湧き上がり、それがたちまちのうちにカダマシの巨体を縛り上げていく。

「きゃああ!綾音さん!そこ・・・そこどいてください!!」

見ると、すぐ私の上まで瀬良がパラシュートで降りてきていた。どうやらうまく操縦できていないようで、こちらに向かって突っ込んでくる。

きゃあ!

慌てて逃げると、なんとか、瀬良はたたらを踏みつつも、地上に降り立つことに成功していた。ただ、その後ろに同じように降り立っていた土門は、足を絡ませて、盛大に顔からコケていた。

「ヘブっ!」
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