第87章 侵掠如火(しんりゃくじょか)
カダマシが持っている神宝『生玉』は、身体の改造を行うことができるものだ。身体の力を増したり、回復能力を高めたりもできる。エネルギーだって無限に作り放題だ。一方、ダリは妖力が強いと言っても「有限」なのだ。使えば減るし、消耗すれば回復に時間も手間(!?)もかかる。戦いが長引けば、不利になっていくのは必然である。
長野の山中でカダマシたちと交戦したときを1日目とすると、今日はおそらく短く見積もって2日目もしくは私がもっと眠っていたとしたら3日目か4日目という可能性もある。その間、ダリはおそらく戦いっぱなしだったのだろう。『私』がいない以上、ダリの妖力の回復はそれほどできていない・・・と思う。
「はーっはっは!オラよ!」
ぐうっとカダマシがだりを握った拳に力を込める。ダリの目に苦悶の表情が浮かぶ。
「ぐう・・・あっ!」
「ダリ!!」
「っは!死ね!」
バキン・・・と不吉な音が鳴り響く。ダリの口元から赤い血がだらりと垂れ、首が不自然な方向に曲がってぐったりとした。
う・・・嘘・・・
涙すら出ない。目の前のことがあまりにも非現実的で、脳がそれを受け入れることを拒否しているかのようだ。考えがまとまらない。頭の中にノイズがいっぱい走って、まるで身体と心が切り離されてしまったような・・・そんな感じだ。
ふわふわとした意識の中、カダマシの声が遠くに聞こえる。
やっぱり俺が一番だ
誰も俺に敵いやしねえ
この女もぶち犯し決定だ
嘘・・・だよね?
夢の果てにやっと会えたのに。あなたが現実にいたと、わかったのに。
会いたかったのに。また、抱かれたかったのに・・・!
「ダリぃぃぃぃ!!」
私の声が空に響いた。それは、虚しく、虚しく・・・答えるものも・・・なく。
・・・なく?
「吾れ 此に天帝より使わされし者
その所、金刀を持ちて命を執り使わせ」
なにか、声が聞こえる・・・。どこから?
「令滅不詳 此刀非凡 常之刀
百錬之鋼 此刀一下
何をか鬼と走らずや 何をか病を癒さずとや」
私は周囲を見渡す。誰も、いない。何も、ない・・・。
それでも、声は次第、次第に大きくなってくる。
「千殃万邪 皆伏死亡
今、吾れこの刀を下し」
上!?
私は天を仰いだ。この声・・・空から聞こえる!?