第8章 楚夢雨雲(そむううん)
とりあえず、お風呂に入れなきゃいけないよね・・・。
さっきまでの疲れはどこへやら。人間はどうしてもやらなければいけないことがあると、頑張れるようだ。
清香ちゃんと一緒にお風呂に入り、私もさっぱりすることができた。なんか小さい子とお風呂に入るのってすごく新鮮だった。
清香ちゃんの服は例の血まみれのジャンパースカートだったので、お風呂上がりには私の半袖Tシャツを着せた。くんくんと匂いを嗅いで「おひさまのにおいするー」といい笑顔で言った日には、その純粋さに胸を打たれ、クラッときてしまった。
当然、幼児用の下着なんかもないわけで、多少大きいが、私のショーツを履かせてみた。
これでなんとか誤魔化してもらおう・・・。とにかく、彼女が寝たら、急いで『Am◯zonお急ぎ便』で注文しなければ・・・、と心に誓う。
まずは清香ちゃんを寝かしつけようというわけで、ころんとベッドに横たえる。私はベッドの下に座って彼女が寝ている枕元に顔を近づけるようにし、ダリはベッドの反対側に腰を掛けていた。そっと頭を撫でると、にこっとする。
「まま・・・おやすみなさい・・・」
なんか、いいな・・・こういうの。
「おやすみなさい・・・清香ちゃん」
目をつぶると、そのまま、すーっと眠りにつく。多分、疲れていたのだろう。
一応理屈は説明してもらったものの、いまいち実感はない。幽霊だった清香ちゃんが、こうして本物の人間みたいになって、私とダリの間ですやすや寝ているなんて・・・。
ああ、私も疲れたよ・・・。
今日一日、本当にいろんなことがありすぎた。
不動産屋さんは空振り、就職口は見つからない、清香ちゃんが縛られてて、それを守ろうとしたら狂骨とかいう巨大ドクロが現れて、宮内庁陰陽寮とかいうところの陰陽師がそれを払おうとして返り討ちにあって、挙げ句、殺されそうになったところを・・・・
ダリに助けられたんだ。
やっと家に帰ってきた。そう思って、ホッとしたら、身体がまた震えてきた。
「怖かった・・・よね・・・」
そっと清香ちゃんの額を手のひらで撫でる。少し汗ばんでいるかな?
清香ちゃんも怖かったに違いない。ずっとずっと独りだったのに、急に鎖で縛られて、鬼の骨のようなやつに閉じ込められて・・・。ごめんね、怖かったはずなのに、私を守ろうとしてくれていたんだよね?
