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天狐あやかし秘譚

第7章 天佑神助(てんゆうしんじょ)


脳が、沸騰する。私は後先考えずに叫んでいた。
「や・・・やめろー!!!」
「な・・・なんだ!?」
叫びながら突っ込んでいったのがよほど意外だったのか、男は後ずさって避けた。私は清香ちゃんと男の間に割り込み、両手を広げた。

「この子に酷いことしないで!!!」

最初は気圧されたようにし、半身で構えていた男だったが、私がそれ以上襲ってくるわけではないとわかったのか、フッと肩の力を抜いた。

「何言ってんだ?お前。そいつは死霊だぜ?さっさと祓ってやるってんだから、どけよ」
「どかない!!」

祓う、って聞いて、それって成仏のこと?って一瞬思ったけど、鎖でがんじがらめにして苦しめているのは絶対に見過ごせない。

男はため息をつく。

「姉ちゃんさ・・・別にあんた祓屋(はらいや)とかじゃねえんだろ?その子、どうしようって言うのよ?そういうのは、俺たちみたいなプロに任せて、な?」

男がチャラチャラと近づいてくる。私はなおも、きっと睨みつけてその場にとどまり続ける。どかないでいるのだが、内心はドキドキもんである。

勢いでこんな感じになっているけど、これからどうしたらいいの!?

「んー、困ったな・・・。いい?姉ちゃん?俺等、これ仕事なの?んー、まあ、見えてるみたいだし、いっか?えっとさ、俺、公務員。こういうの、こう、綺麗にするお仕事。オーケー?」

チャラ男が更に近づいてくる。私は立ち塞がるだけで何もできない。足が震えだした。

「ね?だからさ、ちょっとそこどいてよ。すぐ終わる、っから!」

肩に手をかけて、私を強引にどかそうとする。
その時、私の背後で清香ちゃんが吠えた。

「ぐがあああ・・・ああああああああああああ!!!!!!!」

ガチャガチャと身を縛っている鎖が震え、その体に入った力のせいかベンチごと揺れ出す。
「やべ!」
チャラ男が焦ったような顔をして私を突き飛ばし、右手の棒状のものを鞘走らせる。
あれは懐剣だったようだ。

ひらめくその刀身が公園の白銀灯を照らし返し、ギラギラと光る。
「縛られたるもの 外れたるもの 急ぎ急ぎて 律令のごとく 行為せよ!」
そのままチャラ男が刃を清香ちゃんに突き立てようとする。

「やめて!!!!!」
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