第7章 天佑神助(てんゆうしんじょ)
まあ、とにかく、ダリの存在がこのやさぐれた日常の癒やしのひとつになっているという事実は否めない。
それと、もうひとつの癒やしが清香ちゃんの存在である。
最初の日は一瞬だけ元の姿(?)に戻っただけだったが、毎日のように話しかけていると、だんだん元の姿でいる時間が長くなってきた。もしかしたら、このまま成仏する、とかもあるのかな?とちょっと期待している。
そんなわけで、今日も公園にやってきた。
ちょっと今日は遅くなってしまい、だいぶ日が陰ってきてしまった。公園にはもう人がいなかった。私はいつものベンチに向かう。
「ごめんね!清香ちゃん!遅くなっちゃった」
今ではこんな感じで、まるで生きている子と話しているような感じになっている。
あれ?
いつもは誰もいない清香ちゃんのベンチの前に、今日は誰かがいる。
他の人にとっては『誰もいない』はずのベンチをじっと見ているように見える。
誰?
どうやら男性のようだ。黒い革ジャンにブラックジーンズを履いている。顔はよく見えないが、おそらく20代くらいだろうと思えた。その男が私の声に気づいたのか、こっちを振り向いた。
右の耳に3つのピアス、ついでに鼻ピアスもつけている。革ジャンの前は開いており、中から黒いワイシャツが覗いている。とことん黒い。
黒尽くめの男がクシャッと髪をかきあげる。
「姉ちゃん、もしかして、これ、見えてんの?」
男の陰になってよく見えていかなかったが、彼が身をかわしたせいで清香ちゃんが見えた。
見えた・・・が・・・。
「何してるの!?」
清香ちゃんは何か鎖のようなものでがんじがらめに縛り付けられ、「ぐがあ・・ああぎ」と身を捩って抜け出そうとしていた。
「やっぱ、見えてるんだ」
男は持っている棒状の何かで清香ちゃんの顔をグリグリと押す。
「待ってな・・・今、祓っているところだから」
清香ちゃんの目が、私を捉え、一瞬だけ、生前の姿に戻る。その目からは涙がこぼれている。その瞬間、あの夢がフラッシュバックした。
黒い影が、竹刀で清香ちゃんを打ち付けているところ、
何度も何度も蹴りつけられているところ、
そして、目を灼けた鉄棒で焼かれたところ。