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天狐あやかし秘譚

第6章 霖雨蒼生(りんうそうせい)


「随分・・・物欲しそうな顔をしておるな」
きゃー・・・ば・・・バレてる・・・。
「口づけ・・・今の者たちは『キス』というのか?・・・誘うておるようじゃよ」
さ・・・誘ってなんか・・・。でも、もしかしたらダリが迫ってきた時、『キスされちゃうかも』って思って、その時、唇が・・・そんな形になってしまっていた・・・かも?

ふふふ、とダリが笑う。

そっと目を開けると、目の前にダリの顔があり、またどきりとして目をつぶってしまった。
どうしよう・・・え?これ・・・どうしたらいいの!?

ダリがそっと私の腰に手を回してくる。
「主は・・・とても、可愛らしい・・・そして・・・」
そこで、言葉を切る。え?可愛らしくて・・・何?何?

もうダメだ、心臓がはち切れそうにバクバクしている。
腰に触れているダリの手はもちろん、密着せんばかりになっている身体にも鼓動が伝わっちゃうよ。

「口づけ・・・するか?」

お腹の中がムズムズする。東北での甘いキスを思い出してしまっている。
ほしい、と一言、言えば、きっとしてくれる。
で・・・でも、でも・・・

反面、怖さもあった。どんどんダリに溺れてしまって、戻れなくなったらどうしようという思い。今ですら、ダリを見ると、ドキドキしたり、抱きつきたくなっちゃったりしちゃうのに、これ以上、気持ちいいことされたら、私・・・本当に、本当に、ダリなしでは生きていかれなくなっちゃうよ・・・。

すっと、顎に手を添えてくる。あ・・顎クイ・・・ダメ!

腰を抱く左手にゆっくりと力が入ってくる。身体が引き寄せられる。
「よいと・・・考えて、いいな?」
コクリ・・・とうとう、頷いてしまった。
ダリが少しだけ、唇をかすめるようなキスをした。当然、次を期待するが、そのまま何もない。顎に手はかかったまま。そっと、目を開けると、例のいたずらっぽい目で私を見つめていた。

「言うたであろう?言の葉にして、求めよ、と」

ま・・・また!?
そりゃ、なにか神様のルール的なのがあるのかもしれないけど、いちいち乙女に「言葉にしろって」、そんな事、言うなぁー!!
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