第6章 霖雨蒼生(りんうそうせい)
特にあれがいけなかった。昨日のやつ。裸で一緒に寝たの・・・。あんなにふんわりして、よく眠れたことなんて、この数年、いや、一生を通じてもなかったと思う。
・・・どうしよう。
ダリに悟られたら、絶対になんか言われる。そういうとこだけはものすごく目ざとい。なんだか意識して私を焦らしたり煽ったりして遊んでいるようにも思う。
「こいつ、物欲しそうな目をしている」と思われること、それは・・・避けたい。第一に恥ずかしい。できれば、ダリから強引に迫られて、しょうがなく・・・って感じがいい。乙女として!
そんな邪な思いを顔に出さないように必死に我慢する。パジャマに着替え、ちらっとダリを見る。ダリは物珍しいのか、家にいて特にやることがないときは、よくテレビを見ている。バラエティのような番組よりは、旅番組や紀行番組が好きなようだ。
今は、旅番組で、スペインの光景を見ている。尻尾がすー、すーっとゆっくり左右に揺れているのは、どうやら『興味がある』『面白い』というサインのようだ。
「えっと・・・ダリ?わ・・・私、もう寝るけど・・・」
寝るけど何だ!と心のなかでツッコミを入れる。ああ!どうしても、どうしても物欲しげになっちゃう。
ダリが横目でこっちを見る。なんか流し目で見つめられたような気がして、それだけでドキンとする。キュッと胸の前で合わせた手に力が入る。
「主、その装束も麗しいな・・・」
テレビを消し、ふわっと姿を消すと、私の目の前に突如現れる。
急に妖力を行使した移動をされ、間近に現れたダリにドギマギし、目をそらしてしまう。
ち・・・近い・・・。
ダリが顔を寄せてくる。先程飲んでいた日本酒のせいだろうか、かすかに甘い匂いがする。これって、これって・・・・。
後退り、寝室に使っている部屋との間の引き戸に押し付けられるようになり、思わずギュッと目をつぶってしまう。
ダリが更に顔を近づけてきた気配・・・、吐息が顔にかかるほどの距離。