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天狐あやかし秘譚

第47章 病入膏肓(びょうにゅうこうこう)


☆☆☆
「ふーん・・・あっこなん?品々物之比礼が運ばれたところって」
山間から見下ろす小さな村を見ながら、土御門が尋ねる。傍らに控えていた陰陽師、設楽は控えを見ながらその問いに対して的確に応える。

「中類村(なかがみむら)・・・『かみ』は漢字で『類』と書きますが、昔は普通に『神』の字を使っていたようです。人口は約400人ほど。限界集落に近いですが、一応村人は農業や製薬業などで生計を立てているようです。」
設楽は陰陽寮陰陽部門において、主として調査・研究や卜占を担当する占部衆(うらべしゅう)の陰陽師だった。位階こそいただいていないが、仕事ぶりは真面目で丁寧、その能力には定評があった。
今回、年末に、品々物之比礼が強奪されたという知らせを受けた土御門は、瀬良を伴って陰陽寮京都支所にやってきていた。そこで、占部衆の協力を得て、領巾の行く先を探っていたわけである。年が明けてやっとその行き先が判明した・・・ということで現地調査に乗り込んできたわけだ。

本来なら、わいの出る幕やないんやけど・・・。

通常、よほど危険な・・・それこそ『神』が絡むような案件でなければ、『助』クラスの術者が出張ることはまずない。むしろ、全体の統括をする方を求められるのが普通だ。

強奪したやつのこともようわからんしな。

強奪された現場の検証写真には、無数の昆虫の死骸が道路に堆積していた様子が映し出されていた。真冬の日本において、あれ程の昆虫が発生するわけがない。それもまた異常な事態である。加えて言えば、追っている物も、絶対に逃すわけには行かない特級品の神宝ときている。

敵さんもわからん、神宝も絡んでる・・・しゃあないか・・・。

自分が出張るのは致し方ない・・・そう思い直していた。

「土御門様?大丈夫ですか?」

どうやらため息が漏れていたらしい。瀬良が心配半分、いつものサボり癖かという呆れ顔半分という複雑な表情で聞いてきた。

「ん?ああ・・・めんどいなあと」
「仕事ですから」

瀬良は相変わらず土御門には厳しい。

夜の瀬良ちゃんみたいに、可愛げあればいいんやけどな・・・。

ちらっと見ると、「何か?」とまた冷たく言ってくる。それだけでまた『はあ』とため息が出そうになる。
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