第43章 報恩謝徳(ほうおんしゃとく)
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「最後に、ここに、『ありがとう』って書いて!」
「それも拙者が書くのか?」
「そりゃそうよ!芝三郎のほうが字が上手そうだもの」
「ふむ・・・そうかな・・・」
そう言われると照れてしまう。自分も手習いはほとんど受けたことがないが、ひらがなならかろうじて書くことができた。
何度か別の紙に色鉛筆で『ありがとう』と書いて見せると、「やっぱり芝三郎のほうが上手!」と環は手を叩いて喜んでくれた。
完成してみると、なかなかの大作である。
随所に環が折り方を教えてくれた折り紙の動物やら家やらが貼り付けてあり、色鉛筆で描かれた絵だけでは到底出せないような賑々しさが見られる。これなら、環の母上も喜んで・・・浮かばれることだろう。
だが・・・。
問題は、この絵をどのようにしてあの者に渡すか、だな。
ダリ殿なら常世に何らかの力を及ぼすことができるやもしれない。それか、綾音の知り合いの『おんみょうじ』達ならば、死者にも何らか送り届けることができるやもしれない。
しかし、拙者の妖力では・・・。
それとも、あの者の足元にあった花のように供えれば良いのだろうか?
うううむ・・・。
それに、環は人のくせになぜ故、死者の魂を視ることができるのじゃ?・・・まあ、綾音も視ていたので、そういう人間がいくばくかでもいる、というのはわかるのだが。
「環よ・・・この『ぷれぜんと』の渡し方、なんじゃがな・・・」
「芝三郎にお願いしたい」
・・・え?
拙者が言い終わるより前に、環が言葉を遮るように言ってきた。戸惑っていると、更に言葉を継いできた。
「私じゃ、視えないから」
視えない・・・。なんと!?
この者は、視えてはいなかったのか。てっきり視えていて、拙者が視えているのを分かっていて、それで言っていたのだとばっかり思っていた。
「拙者が渡して、受け取ってくれる、とは限らぬぞ?」
相手にとって、拙者は見ず知らずの他人。しかも、なんら特別な術も使えぬし、こちらからは視えていても、彼女からこちらが視えているとは限らない。置いてくるだけならできるやもしれぬが・・・。
「ううん・・・大丈夫だよ。きっと・・・それに、ママは私のこと、怒っているのかもしれないし・・・。私から渡すより、芝三郎からの方がいいよ」