第43章 報恩謝徳(ほうおんしゃとく)
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次の日。いそいそと芝三郎が家を出ていく。昨日と同じ時間だ。
やはり怪しい。
「何してるのかしら?」
塀の影から、とててててと走っていく芝三郎の様子をそっとうかがう。
彼の手には昨日隠そうとしていた紙がしっかり握られている。よほど大事なのか、折れてしまわないように慎重に持っている感じだ。結局、昨日、あの紙を見ることはしなかった。それはなんだか芝三郎のプライバシーを冒しているような気がするからだ。でも、やっぱり気になる・・・。ということで、折衷案としてこうして尾行している、というわけだ。
「綾音よ・・・我もついていく必要があるのか?」
ちょっとかがんだ私の頭の上からダリも同様に様子をうかがいながら、不満げに言う。
だって、『あやかしの気配』なんて、あなたが言うから!
「ね・・・念の為よ」
「あの紙には確かにあやかしというか、妙な気配があるが・・・特に強いものでも悪いものでもないぞ・・・」
まあ、言葉を切ったところを見ると、そんなに害のあるものではないんだろうな・・・と思いつつも、この間の清香ちゃんの例もある。芝三郎が変なあやかしに目をつけられて・・・ということも考えられるわけだ。
そのとき、ダリがいないと、困る。
「お願い・・・万が一のために、ついてきて・・・」
このなんの気なしの言葉に、ダリがふっと笑みをこぼしたことに、この時の私は気づいていなかった。
そんなこんなで、スパイよろしく芝三郎のあとをつけてきたわけであるが、彼が向かっていたのはどうやら区民センターの下にある、いわゆる児童館のようである。ここでは児童プラザと呼んでいるようだ。