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天狐あやかし秘譚

第40章 一意専心(いちいせんしん)


「おっと!」
「つ・・・土御門様!?急に立ち止まらないでください!」
「なんやけったいな・・・あれ見てみい」
土御門様が指さした方を見ると、一人の老婆が箒を振り回しておそろいのブルゾンを着た男たちを追い払おうとしていた。どうやら、老婆は一本の樹を守ろうとしているらしかった。

「主ら!この樹に指一本触れてみろ!末代まで祟ってやるぞおお!!」

随分物騒なことを言う老婆だ。周囲にたむろしているおそろいのブルゾン男たちはどうやら市役所の職員のようだ。

「玉置さん、この樹は危険なんです。市でも伐採決定が降りているんです。それに、これは市の財産ですし、玉置さんがどうこうできる権利があるわけじゃないんですよ」

丁寧に説明しようとしているようだが、老婆・・・玉置さんというのだろうが、は全く聞く耳を持とうとしない。

「ふざけんじゃねえぇ!この樹はな!私ら市民をずーっと見守って来てくれてたんだ!それを古くなったから切りますだあ!?そんなの私の目の黒いうちは見逃すわけにゃあいかねええなああ!!!」
玉置と呼ばれた老婆は、ぶんと竹箒を振り回すと、弁慶よろしく大見得を切った。

「なんやあの婆さん、えらい威勢がええなあ。なあ、もっと近くで見ようや」
土御門様が野次馬根性丸出しで、玉置と市の職員を遠巻きにする人だかりに加わろうとする。
「ちょ・・・ちょっと!土御門様!」
呼び止めて止まるわけもなく、彼はあっという間に清香ちゃんと芝三郎を連れて人だかりに加わってしまう。なにか言われたのか、清香ちゃんをよいしょと肩車しているのが遠目に分かった。

まあ・・・いいか、別に急がないし。

そうなのだ。綾音とダリはつい今しがた新幹線で岡山を出発したばかりなのだ。岡山から東京まで新幹線のぞみ号で約3時間半ほど。ここから東京駅までは1時間ほどでついてしまう。2時間半はゆとりがあるのだ。

お昼を食べる時間を考えても、あと1時間くらいはのんびりしてても問題ない。土御門様か清香ちゃんが飽きるまでゆっくり待っていることにしようか。

私はベンチに座り、空を見る。

見事な冬の晴天だ。ここのところで急に東京も寒くなってきた。息が白く、というほどではないが、じっとしていると身体に冷気が沁み込んでくるような気がする。
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