第40章 一意専心(いちいせんしん)
『あの・・・瀬良さん?』
お腹の中で声がする。桔梗だ。
なあに?と心の中で問い返す。
『あの、木の側に行きたいのですが・・・』
え?
あの木、というのはとりも直さず、例の老婆が死守しようとしている老木のことだろう。今、あそこに行くわけには行かないの、と言ってみる。
その刹那、私の身体を奇妙な落下感が襲う。まるで、地面を透かして、ヒュンと地球の中心に向かって落ちていくような、そんな感覚だ。
何!?
思う間もなく、私の意識は闇に呑まれる。最後の一瞬、『ごめんなさい』という桔梗の声が闇の底から響いたような気がした。