第35章 窮鳥入懐(きゅうちょうにゅうかい)
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「我が祖先と交わした契に基づき、ホシガリ様よ、浮内の願いを叶へたまえ!あの者たちを八つ裂きにせよ」
ぐおおおおおお!
ホシガリ様が獣のように吠え、床を蹴る。あまりの衝撃に床の板材が爆ぜた。
それを合図に、圭介の背後にいた数人の男も拳銃を取り出し、一斉にこちらに銃口を向ける。中には草介さんのボディガードと自称していた「木島」もいた。
「ダリさん、ホシガリ様の方をお願いします。私は、あちらの雑魚を!」
「承知」
ダリが私と草介さんを背後にかばいながら、退魔の古槍を顕現させ、飛びかかってきたホシガリ様をその槍で受け止めた。
「ぐうっ!」
ダリの力を持ってしても、強化されたホシガリ様のタックルを余裕で止める、というわけには行かないようだ。ズズズッと後ろに追いやられる。
「なるほど・・・神宝の力か・・・」
「大丈夫!?ダリ!」
微力ながらダリの背中を支えてみるが、本当に微力だ。多分なんの役にも立っていない。
「綾音・・・」
「何!?」
ホシガリ様は一旦、槍から手を離し、鉤爪のようになった両手を振りかざして斬撃よろしく切りかかってくる。それを槍でいなしながら、ダリは私達をチラチラを見ている。
こっちが気になって十分戦えないの!?
だとしたら・・・。私は隠れられるようなところがないかを探す。多分、この屋敷に精通しているのは圭介だけだろうから、部隊が二手に分かれて挟み撃ち、ということない・・・と思うのでどこかの扉から逃げる、というのもあるだろうが、そうすると、今度はダリと宝生前がこの屋敷の中で迷ってしまうだろう。
ああ!どうしたら!!
「綾音!」
分かってます、邪魔だから、どこかに隠れてろってことでしょ!?
「帰ったら・・・今度こそ、まぐわおうぞ・・・約束・・・してくれるか?」
はい?
一瞬、意味がわからなかったが、私の左脳がその言葉の意味することの分析を終え、情緒を司る右脳に上方の発信を終えると、私の顔は爆発的に紅潮した。
「な!何言ってるのよ!!!」
こんなときに!みんなピンチじゃん!
実際、先ほど来、ダリには間断なくホシガリ様の容赦ない斬撃が繰り返され、彼はそれをさばくので精一杯の様子だ。加えて、圭介が連れてきた男たちが拳銃をバンバン撃っている。