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天狐あやかし秘譚

第33章 往古来今(おうこらいこん)


☆☆☆
「その話が本当なら・・・」
宝生前さんがため息をつく。

「そうか・・・道理で切った感触があやかしとは違うと思うた」
ダリさんが座ったまま、ぎゅっと古槍を握りしめた。
「そうです。ホシガリ様は、人間です。神宝『品々物之比礼(くさぐさのもののひれ)』で変わり果ててはしまいましたが、もともとはただの人間なんです」
「なんということだ・・・」
宝生前さんが天を仰ぐ。

「おい!あいつはどこに行った?たとえ殺すことはできなくとも、綾音は取り戻さねばならぬ・・・」
ダリさんがぎろりと僕を睨みつけてくる。一体、二人はどういう関係なのだろうか・・・。

「おそらく、奥の間だと思います。私達一族にのみ、この家の主要な部屋の場所が伝えられています。私も小さい頃に数回、ここに入ったことがあります。」

そう、そして、見てしまったのだ。ホシガリ様が先代の『贄』をどのように貪っていたのかを・・・。

「この家が、こんな構造になっているのはホシガリ様を閉じ込めるため・・・というところでしょうか」
宝生前さんの疑問に、僕はコクリと頷く。
「実は、ホシガリ様は、祖先との契約により、この家の壁から外に出ることは出来ません。なので、こんな風に迷路状にする必要は本来ないのです。でも、それでも祖先たちは恐ろしかったのでしょう。ホシガリ様に復讐されることが・・・。だから、決して彼女がこの家から出てこられないように、代々の当主はこの家を増築し続けました。この家は先祖たちがホシガリ様に対して抱く恐怖心の塊そのものなのです。」

そうだ、この家は、浮内の家が受け継いできた狂気の象徴だ。
一人の女の人生を狂わせ、今もなお、『婿』という名の生贄を与えながらその血を啜り続ける醜い一族。

姉が言っていた。母はいつも不幸そうだったと。
ただ、その身体が先代当主の好みであったというだけの理由で、将来の生贄のための子を孕まされるべく、夜ごとに犯され続けた母。姉は夜ごとに繰り返される狂宴を止めることも出来ず、幼い身体を小さくして震えていることしか出来なかったと言っていた。
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