第33章 往古来今(おうこらいこん)
引き潰された愛しい人の姿を見て、娘は自らの心の醜さを悔い、死を望んだ。
しかし、その瞬間、娘にとって、『死ぬこと』が一番の願望になってしまった。そのため領巾の力によって、娘は決して死ぬことがなくなってしまったのだ。
これが浮内の主が企んだことであった。
死ねない体になった娘に対して、浮内の主は交わした約束の名のもとに、要求を突きつけた。
用意した家に入れ。そこから出るな。
そして、浮内の家が望むものを出し続けよ、と。
娘は、最も得たいと思う死を望みながら、そうできず、迷路のような家をさまようことになる。そして、浮内の者は、その娘に『ホシガリ様』という名を与えて祀り、約束の力で、彼女の持つ領巾の力を我がものとして繁栄を確かなものにしてきたのだ。
しかし、永遠に生きるとは言え、限界がある。ホシガリ様は周期的に理性を失い、凶暴性が増し、暴れることがあった。それを防ぐには、かつての願望を一部満たしてやるしかない。というわけで、浮内家では数十年に1度、『婿』として生贄を捧げ続けることになったのだ。