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天狐あやかし秘譚

第33章 往古来今(おうこらいこん)


☆☆☆
昔、村はずれの家に二人の娘がいた。
娘の一人は美しいがわがままで短気で、何もかもを強欲に欲しがる性質だった。
もう一人は容姿こそ並だが、気立てが良く、優しい娘だった。

当時、村には見目麗しい清延という若者がいた。
その若者はその家の次女、優しい娘に恋をした。
それを見て、わがままな娘は怒り狂った。それはそれは、ひどい嫉妬と癇癪で目も当てられなかったという。

そのわがままな娘の様子を見て、浮内の祖先はある妙案を思いついた。

実は、浮内の家には家宝として、代々伝わる『神の領巾』を所蔵していた。
伝承によると、この領巾はどのようなものでも産み出すことができるが、自分の一番必要なものは出すことができない、という代物だった。そして、一度使えば死ぬまで手放すことは出来ないのだ。

つまり、使ったが最後、自分が最も必要なものについては生み出すことができず、結果的にそれを永遠に失うことになるのだ。

さて、わがままな娘を見た当時の浮内の主は、この領巾をなんとかわがままな娘に使わせようとしたのだ。彼は、一計を案じ、娘にこう言った。

『この領巾を使えば、あなたは美しさも、財産も、ありとあらゆるものを手に入れることができる』
そして、
『領巾を提供する代わりに私の家に財宝をもたらすことを約束しろ』
と。

この時、浮内の主は、わざと『いちばん大事なものを失う』という言葉を娘に伝えなかった。当然、わがままな娘は一も二もなくその提案に飛びついた。

彼女は領巾を身につけた。
 ただでさえ美しい娘は比類なき美しさを手に入れた。
 望めば天から黄金が、地から銀が湧き出した。
 ありとあらゆるものの心を魅了する力を手に入れた。

しかし、若者の心だけは手に入れることができなかった。
わがままな娘の嫉妬心に恐れをなした若者は、優しい娘を連れて島から逃げ出そうとした。それを知ったわがままな娘は、彼らを追いかけ、叫んだ。

『なぜ私のものにならない!」

そして、領巾に願った。あの人を私の下へ!と。
領巾は一陣の風を巻き起こした。その結果、若者と優しい娘は風に巻き上げられ、来たのだ。娘の足元に。そう、領巾は確かにつれてきた。遥か天上に巻き上げ、そのまま落下させたのだ。
もちろん、若者は死んでしまった。
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