第32章 毛骨悚然(もうこつしょうぜん)
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話し合った末、結局、この入口を強行突破するのが一番だろうと結論し、ダリに鍵を壊してもらい、私達は中に入り込んだ。
外見からして奇妙なこの家は内もまた、極めて奇妙であった。
裏戸を入り、三和土を上がると、すぐに目の前に襖があった。それを開くと、目の前に右上に登る階段が横切っており、左右には廊下が伸びていた。ちなみに階段はそのまま天井に突き当たり、どこにも向かっていなかった。
左右を見ると、通路がまっすぐに進んでいるが、廊下の途中に障子が意味もなく立っていたり、明かりを吊るす金具がまるで機能的ではない位置についていたりしている。
立っているだけで気がおかしくなりそうな家だった。
ダリが、ふとしゃがみ込んだ。
「ずいぶん長いこと人が歩いていないようだ。見ろ、草介とやらの足跡がある」
宝生前が荷物からペンライトを取り出す。妖怪であるダリにはよく見えるかもしれないが、私達では、この暗がりで足跡を見分けることは不可能に近い。
「たしかにダリさんの言うとおりです。こちらに続いていますね」
足跡は左手の方に進んでいた。
その足跡の様子からして、あまり急いでいるようには見えないが、早く追いつかないと、草介さんがホシガリ様の生贄になってしまうかもしれない。
「急ごう」
私たちは足跡を追って、この奇妙な屋敷の奥へ奥へと侵入していった。
床に残る微かな足跡を追いながら、うんざりするほど複雑な経路をたどる。最後に足跡は木の引き戸の前で途切れていた。
ここにいるのかな?
私が引き戸に手をかけると、ダリがその手をぎゅっと握った。
「綾音・・・待て・・・。何か、いる」
そして、代わりにダリが引き戸を開いた。
あ!?
引き戸の向こうはこれまでのような闇ではなく、四方の壁に蝋燭の火が灯っていた。部屋の大きさは変な喩えだが、能舞台くらい。ちょうど十畳ほどだろうか?床は相変わらず板張りであるが、引き戸と反対側の壁際に一段高くなっているところがあり、そこに部屋の中なのに屋根がかかっていた。
部屋の中に屋根・・・というところで、私は能舞台を連想したようだ。
そして、その能舞台に当たるところに、横たわる人影と、座っている『何か』がいた。
人影は・・・
「草介さん!」
そう、目を閉じて、ぐったりと横になっているのは浮内草介だった。
