第32章 毛骨悚然(もうこつしょうぜん)
☆☆☆
輿は村を出てから、山間の方に向かっていった。そして、複雑な山道をくねくねと登っていく。日はどんどんと傾いていき、あっという間に周囲は闇に閉ざされていく。
輿を先導する高灯籠の明かりのほか、数人が松明を灯して歩いていた。
松明の明かりをチロチロと揺らしながら、ゆっくりゆっくりと暗い山道を登っていく様は、先程よりも輪をかけて葬列の様相を強く見せた。
私と宝生前はあまり行列に近づかないように距離を取り、ささやかに揺れる明かりを頼りに後をつけていった。ダリは先程から狐神モードで、森の木々の間をぴょんぴょんと飛び跳ねながらついてくる。あちらのほうが彼にとっては移動しやすいらしい。
さすが、狐・・・。
幻想的とも言える行列が暗い山道を登っていく。そのさまは、まるで異界の入口に入り込んでいくかのようだ。黒装束の人々は無言でその闇に飲み込まれていく。
どこを歩いているのかもわからないまま、輿は右に左に複雑な山道を登っていった。
そして、とうとう左右に延々と広がる長い石壁にたどり着く。突き当たると、壁に沿って右に曲がり、その歩を進めていった。
「あれが・・・本家?」
だとしたら、相当広い敷地である。行列の明かりに照らされた石壁は延々と続いているように見える。壁は2m位あり、中をうかがい知ることも出来ない。
一体、こんな山奥で、こんな豪邸をどうやって維持しているんだろう?
食料はどうやって運んでいるのだろう・・・という非常に所帯じみたことを考えてしまう。今、通ってきた道は人が横に三人くらい並んで歩くことは出来そうだが、車で登ってこれるような道ではないように思えた。
それとも、他に『本道』みたいな道があるのだろうか?
「どうやら本家に入るらしいですよ」
宝生前が目の前を指差す。確かに、行列が壁の中に入っていくように見えた。どうやら、あそこに入口があるらしい。立派な門構えがあるようには見えないので、通用門的なものなのかもしれない。
行列がすべて壁の中に飲み込まれたのを見計らって、私達も入口まで近づく。そっと中を伺うと、輿が降ろされ、草介が立ち上がっていた。