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天狐あやかし秘譚

第30章 形影相弔(けいえいそうちょう)


あ、あと、一番気になっているのが、『今日は浮内の家ではないところに宿泊されたほうがより楽しめると思いますので』という圭介の言葉だ。あの後の笑いが、何か意味深げに私には感じられた。

楽しむ・・・って?
そう言えば、食堂の女将は『今日の夜はどの家もどんちゃん騒ぎ』と言っていたが、ソレのことなのかな?宴会がある・・・的な?

でも、この旅館では普通にご飯食べちゃったしなあ。

結局、考えがまとまらないまま、私はお風呂から上がった。いい湯を頂いたおかげで肌もツヤツヤで髪の毛もさらっとできた。

やっと、午前中の船酔いの後遺症が拭えた気がする。
まだ、時間としては8時前だ。ダリの部屋にでも行ってみようかな・・・。

この時、多分、私は考え事をしていたせいで周囲への気配りが疎かになっていたのだと思う。私が風呂から上がった時から、後ろをついてくる人の気配に気づけなかったのだ。

私が部屋の扉を開け、中に入ろうとした瞬間、どんと後ろから中に押し込まれた。そのまま男が二人、部屋に闖入してきた。

「な・・・何!あなた達!」

突き飛ばされ、尻餅をついた姿勢で二人の男を見上げる。一応キッと睨みつけたつもりだったが、迫力はさほどなかっただろう。

やばい・・・何このシチュエーション。

とりあえず、這いずって、自分の荷物を確保しようとする。ただ、そのせいで、男二人に部屋の隅に追い詰められる結果になってしまったのも事実だった。男たちの眼に揺れる劣情の炎が私にその目的を如実に知らせた。

間の悪いことに、今の私は風呂上がりでよく火照った身体に、浴衣というかなり扇情的な姿をしていた。男の一人が舌なめずりをする。

男は二人とも20代前半で、非常に屈強な体躯の持ち主である。とてもじゃないけど、筋力で勝てる気がしない。

「輿入祭の夜は、お楽しみの夜」
一人の男が言う。
「どの男が、どの女を犯しても・・・」
もう一人が続ける。
「「文句は言えない」」
二人が同時に言った。

不埒な笑みを浮かべた男たちの4本の手が、私に一気に襲いかかってきた。

や・・やめてぇ!
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