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天狐あやかし秘譚

第30章 形影相弔(けいえいそうちょう)


昼ご飯を食べそこねた私はがっつかないようにするのが精一杯。
料理が運ばれてくるそばから平らげていくという乙女にあるまじき食欲を見せてしまう。
普段ものを食べないダリも、お酒を飲みながら美味しそうに食していた。今は人間モードなのでないのだが、尻尾があったらさぞやふるふると踊っていたことだろう。

料理に舌鼓を打った後は、お風呂である。こちらの宿には温泉ではないものの、大浴場があるということだ。

「それでは、お風呂に入った後、そうですね・・・、9時ぐらいに私の部屋に来ていただけますか?そこで明日のことを相談するとしましょう」

現在時刻は7時である。ゆっくりお風呂に浸かっても余りあるほどの時間だ。どうしよう。

ちらっとダリを見る。
ダリは・・・大丈夫かな?

一人にして平気だろうか?少しだけ心配になる。多分彼はお風呂には入らない。・・・一人でどっかほっつき歩いたり・・・まあ、してもいいか。迷子になることはないだろうし。

それに、考えてみれば、今日の午前中は船での移動でゲロゲロだったし、潮風に当たって髪の毛が若干キシキシときしんでいる気がする。さっぱりしたい。

とりあえずやっぱり風呂に入ろう。

そう思い直し、私は部屋から必要なものを持って浴室に向かうことにした。

風呂は石造りで落ち着いた風情だった。特に露天風呂などの変わったところはないが、広くて清潔で、とても気持ちが良かった。

お湯に浸かり、ぼんやりと今日のことを振り返る。

なんだか、色々と引っかかることが多い気がする。
そもそも、ホシガリ様の正体がわからなさすぎる。伝承どおりだと、鬼女、ということになるが、それがもとの長者の家ではなく、別の家の神様になっている、というのはなんだか不思議な気がする。

それこそ宝生前に聞けば『そんなのはよくあることですよ』的な事を言ったりするのかもしれないが・・・。

それに、浮内の本家が島外の人は愚か、島内の人間であっても浮内分家以外は足を踏み入れられないというのも奇妙な話だ。まあ、内容を聞くと無理もない気もするが、婿入りの儀とやらも見ることが出来ないのだという。

随分閉鎖的だよな・・・。

あの草介さんは、そんな閉鎖的な『本家』に入って大丈夫なのかな?なんだか外で勉強したいみたいだけど、本家を継ぐ以上、島からは出られない・・・とか?
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