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天狐あやかし秘譚

第30章 形影相弔(けいえいそうちょう)


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【形影相弔】頼るべき人がおらず孤独でさびしいさま。
誰も慰めないので、自分の影に自分を慰めてもらうしかないくらい孤独、みたいな。
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この島では『三男』というのは忌避される。

それは、三男が捨てられる子を意味するからだ。昔、豊かではないこの地ではあまり多くの子を育てることが出来なかった。なので、長男は家を継ぐために必要、その予備としての次男までが大切にされたが、三男は余計モノと考えられたのだ。

女子は嫁に出したり、下手したら交換物としての価値を見出されていたが、男子はその価値すらない、というわけだ。

浮内分家の筆頭であるこの家には、長男である圭介、次男である怜介がいる。その後も先代当主は子を作り続けた。長姉和紗が生まれた。その後、当主は手伝いとしてこの家にいた僕の本当の母である明恵に手を付けた。

そして、次姉の詩乃が生まれ、最後に僕、草介が誕生した。

僕が誕生してすぐに、明恵は暇を出された。
詩乃は18になってすぐに別の島のとある家に嫁に出された。長姉和紗は今年で25になるが、普通に内地の会社に勤め、今度、政界の有力者との婚姻が決まっている。

「草介様・・・明日の御召物の準備が整っております。一度袖を通されよとのお館様の命です」

『輿入祭は荘厳でなければならない』

圭介はいつもそう言っていた。圭介・・・世間では『兄』ということになっている男。しかし、僕はただの一度も彼を兄と思ったことはなかった。もちろん、次兄の怜介、長姉の和紗のことも。

僕が本当に兄弟だと思っているのは、遠く離れた島に嫁にやられた詩乃だけだった。小さい頃から、僕と詩乃は、この家の離れで養われていた。他の兄弟とは明らかに異なる待遇だった。それでも、詩乃はまだいいかもしれない。詩乃が嫁に出された家では、詩乃は『浮内家の者』として丁重に扱われているという。

詩乃が嫁に行った日のことは今でも忘れない。

よく、晴れた秋の日だった。

船着き場で向こうの家の者が迎えに来ていた場で、花嫁衣装に身を包んでいた。
浮内の家で見送りに来たのは、形ばかりに圭介と、僕、そして僕の『護衛』だけだった。

詩乃が最後に僕に駆け寄ってきた。ぎゅっと手を握る。右の目から、涙が一筋溢れていた。

「草介・・・。諦め・・・ないで・・・。」
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