第30章 形影相弔(けいえいそうちょう)
ぎゅっと僕を抱きしめた姉の体温は、今でも鮮明に思い出すことができる。
促され、あてがわれた部屋を出る。この部屋はまるで座敷牢だ。僕が逃げ出さないよう常に入口にはお付の者が控えている。小さい頃から隣の島の学校に通う際も、いつだって「護衛」と言う名の見張り役がついていた。
今もそうだ。
部屋を出ると、声をかけてきた男性、木島が立っていた。旧家浮内家の名に恥じることのない立ち居振る舞いを身にはつけているが、圭介に拾われてここに来る前はスジ者だったという噂だ。
木島に促され、二の間に入る。そこには二人の女中がいる。僕がそのまま立っていると、あっという間に、桐の箱に入った紋付きを着せてくれる。
鏡に写った自分の姿を見る。黒紋付は儀礼用の正装だが、その黒さが葬式を連想させる。
「よくお似合いですよ」
女中の言葉が遠くに聞こえる。何が似合うものか。
明日行われる、儀式は僕の葬儀だ。
そう、僕は、先代当主によって意図して作られたのだ。
明日行われる、輿入祭で、ホシガリ様に生贄として与えられるために、だ。