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天狐あやかし秘譚

第29章 異聞奇譚(いぶんきたん)


そうだ。そもそも、ここに来たのもそのホシガリ様が『邪神』疑惑があったからだ。まあ、祀っている当の本人たちが『ホシガリ様は邪神でして・・・』というとは思えないが、探りをいれるとすればここからだろう。

「ホシガリ様については、次のような伝承が残されています。ここらでは有名な話で、多分誰に聞いても同じような話を聞けると思いますよ」

そう言って、圭介が話したのは次のようなちょっと悲しい話だった。

☆☆☆
昔、長者の家に二人の娘がいた。

長女は非常に美しく、あらゆる男性の心を奪うような女だったが、非常に高慢で、自分の自由にならないものは決して容赦しない、というような娘だった。
対して、次女は容姿があまり良くなく、ずんぐりとした女だったが、気立てが良く、愛らしい娘だった。

当時、島にはここら一帯で一番の美男子と言われるほどの若者がいた。
若者は身体が強く、習い覚えた武芸もメキメキと上達し、武士にも取り立てられようかという男だった。なので、島中の娘はこの若者に夢中であった。

当然、くだんの長女もこの若者をこそ婿に、と所望した。長者の家の生まれである自分が最もこの若者の愛を受けるにふさわしいと考えたのだ。
若者自身も当初はこの長女の美しさに惚れ、家に通い詰めたが、そのときに出会った次女の気立ての良さ、優しさに次第に心を惹かれ、最後には完全に心変わりし、次女を妻にと長者に申し出ることになる。

困ったのは長者だった。

若者を跡取りに据えれば家が繁栄するのは間違いがない。
しかし、長女は自分が家を継ぐことを決して譲らない。かといって、若者の気持ちを今更長女に向けることなどできるはずもない。

悩みに悩んでいたある日、父親の心根を見抜いた次女は、最悪の結末を選んでしまう。
自ら、崖から身を投げて死ぬことを選んだのだ。

悲劇はこれに留まらなかった。このことを知った若者は、次女の後を追い、同じ崖から身を投げてしまった。

長女はその崖の上であらん限りの力で叫んだ。

「なぜ妾のものにならない!」
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