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天狐あやかし秘譚

第29章 異聞奇譚(いぶんきたん)


宝生前がにこやかに話す。圭介もまんざらでもない様子だ。こうしてスルリと相手の懐に入り込んで見せるのは、先程も見せている宝生前の得意技である。宝生前の交渉テクニックにより、浮内圭介から多くの情報を得ることが出来た。

一番大きかったのは、タイムスケジュールを把握できたことである。
輿入祭は、『輿』と呼ばれる村の若者が担ぐ神輿のようなものに、今回婿入りをする草介を乗せて、この浮内分家を出発するところから始まるという。その時間が大体16時頃とのことである。その後、輿は村の中を練り歩くのだそうだ。

「輿が練り歩くのは一番神聖な部分です。何卒、作法を乱すことがないようお願いします。」

そして、日も暮れかかった18時30分に本家に入り、その後は、本家内で『婿入りの儀』が行われるという。

「婿入りの儀を見せてもらうわけにはいきませんか」
宝生前が確認すると、圭介は首を横に振る。
「婿入りの儀については、本家に入った婿と、本家の娘のみで行われるのが習わしです。我々も見ることが出来ません。」
そうですか・・・とやや残念そうにする宝生前だったが、もう少し食い下がっていた。
「では、どのような儀式が行われるのか・・・、その内容については分家の方もご存じない?」
「詳しくは・・・。ただ、ホシガリ様をその身に宿した本家の娘と・・・その・・・」
ちらっと私の方を見て言いにくそうにする。
?なんだろう・・・。
「ああ・・・大丈夫です。浦原くんも民俗学の研究者の端くれですから、アシイレや妻問いなどの婚姻関連儀礼についても精通してますので・・・」

アシイレ?妻問い?何じゃそりゃ。
頭の中は疑問符でいっぱいだったが、宝生前の邪魔をするわけにはいかないので、とりあえず曖昧に笑って頷いておいた。

「・・・まあ、そういった儀式に近いですね。男女逆ですが・・・。要は本家の娘と婿がホシガリ様の間でまぐわうのです」

まぐわう・・・。つまりはセックス・・・。たしかにそりゃ他の人は見れませんな・・・。

「ふむ・・・ホシガリ様をその身に宿す、というのが非常に興味深いですね・・・。ところで、そのホシガリ様というのは、どういった謂れのある神なのでしょう。非常に珍しい名前ですが・・・」
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