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天狐あやかし秘譚

第29章 異聞奇譚(いぶんきたん)


感嘆の声が漏れてしまう。綿貫亭もそこそこ大きい一戸建てだが、これはレベルが違う。まさにそこにあるのは、昔の日本映画で見たような旧家そのものだった。玄関は両開きの引き戸。その向こうには三和土があり、その向こうは一段高くなっている。こんなのは高級旅館や時代劇ぐらいでしか見たことがない。

「ごめんください」

ビビりまくっている私を尻目に、宝生前はまるで友達の家に来たかのような感じで呼びかける。奥から返事があり、女中さんと思われる方が出てきた。
宝生前が大学教授という自分の身分と『村で行われる珍しいお祭の調査協力を依頼に来た』と要件を述べた。少し待たされたが、この家の主の許可が出たようで、私達は奥の間に通されることになった。

全室和室かと思いきや、内部がリノベーションされているようで、大きなテーブルのある洋室に通される。一番奥のお誕生日席に男性がひとり座っていた。勧められるままに男性向かって左に宝生前、右に私とダリが座る。

「はじめまして、当家の当主を務めております、浮内圭介です。」

高級そうなスーツに身を包んだ20代後半くらいの若者だった。この若さで当主?ふーん・・・。髪の毛は短髪でしっかりと整髪料で整えられていた。金持ちのボンボンらしく、色白の肌だったが、怠惰な印象はない。どちらかというと、カミソリのように触れたら切れそうな隙のない感じがした。

「はじめまして、わたくしは大学で民俗学を専門としている宝生前と申します。こちらは助手の浦原さんとダリさん。本日はアポイントもなく押しかけて大変失礼をいたしました」

圭介は、宝生前が名刺を出すと、それを一瞥し、少し表情を和らげた。どうやら権威に弱いタイプのようだ。

「いやいや、東京の学者様がこんな辺鄙なところに・・・調査、といいますと、一体どんなことを?」
「私の専門が日本に伝わる珍しいお祭、というものでして、そのルーツとか、作法とかを調査しているんです。祭というのには非常に深くその土地の文化が染み付いておりますので、それにいたく興味があるんです。まあ、ゆくゆくは、論文にまとめられたらと思ってはいるんですがね。」
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