• テキストサイズ

天狐あやかし秘譚

第29章 異聞奇譚(いぶんきたん)


☆☆☆
彼らがひとしきり瀬戸内海の海の幸を堪能したところで、やっと私は動けるようになった。女将にお礼を言って店を後にすると、宝生前の提案で、浮内本家に行くことにした。まあ確かに祭の主催者に会うのが一番いいんだろうと思う。

歩いていると、やっぱり私達のことが物珍しいのか、あちこちの家の窓から視線を感じたり、畑で作業している人も立ち上がって宝生前をじっと見たりしている。

スーツ姿の人も珍しいのかもしれないな・・・。そう言えば、この島に来てからスーツ姿の人なんて見たことがない。って、いうか、なんで宝生前はスーツなんだ?

ちなみに私は割とラフなデニムのパンツにボーダーのワイシャツ、海上が少し冷えたのでブラウンのVネックのセーターという出で立ちだ。ダリは人間モードで割とゆったりとした薄茶のチノパンに白の長袖Tシャツ、ブルゾンという感じの格好だった。ちなみに髪型は私の好みでウルフカットにしてもらっている。

宝生前だけが、ビシッと薄茶のスーツに白ワイシャツ、濃紺のネクタイである。まあ、似合うから良いんだけど・・・。

さて、そんなこんなで歩いているうちに、港にほど近いところにある駐在所についた。ここで、浮内本家の場所を聞こうと思ったのだが、ひとつ問題が持ち上がった。

「浮内本家?ああ・・・あそこはよそもんは入れんよ」

あっさりとお巡りさんに言われてしまったのだ。なんでも、本家の当主は多忙を極めるので、分家の当主たちと話すことはあっても、島外の者に会うことはないのだそうだ。

「うーん・・・仕方ありませんね・・・。では、浮内圭介さんの家に行きますか」
宝生前は先ほど女将から聞いた、今回の婿を出す浮内家の分家である、圭介のところに行くことにしたようだった。そちらの家の所在はすぐに駐在さんが教えてくれた。

案内されたところに行くと、大層立派な家が立っていた。入口からしてしっかりした門があり、そこから家の入口までは相当の距離があるようだった。田舎の家らしく、しっかりとした作りだった。

「ほえー、時代劇みたいな家だああ」
/ 475ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp