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天狐あやかし秘譚

第23章 隋珠和璧(ずいしゅかへき)


☆☆☆
異界・・・。

ダリと一緒に行動するようになって、異界にのまれたのは、4回目、だっただろうか?
一回目は東北の曲がり神の住処に行った時、
二回目は芝三郎の化け比べに巻き込まれた時、
三回目は女怪を封じるべく、ダリが作った結界に入った時・・・。

ああ、そうか、ダリがお詫びに招待してくれた温泉も異界だったから、今回で5回目か・・・。

多すぎる。

異界はたいてい暗い。今回の異界も例に漏れず、真っ暗だった。ただ、目の前にどんと大きな樹が生えており、その樹が暗闇の中で黄金色に浮き立つように見えた。

樹は、けやきのように見えた。

大きく枝を伸ばし、青々とした葉が茂っている。
生命力にあふれる圧倒されるほど大きな樹だった。

「すごい・・・」

思わず私は見上げてしまう。

ひゅん・・・

視界の端を何かがよぎる。さっきと同じ影だ。
着物を着ている。
赤い・・・着物。

目で追おうとするが、視界の端から端に逃げてなかなか捉えることができない。

ひゅん、ひゅん
ひゅん、ひゅん

影は四方八方を飛び回る。普通に物理的に移動しているとしたらありえないような動きだ。そこはやはり異界の中、瞬間移動的な方法で動いているのかもしれない。

「ダリ!なにか・・・いるよ」

言うが、やはりダリには見えてない様子だ。キョロキョロと見回しているが、捉えている様子がない。捉えられないままに、ダリが槍を右手に顕現させる。

「祓うぞ・・・、綾音。どっちにいるか、教えてくれ」

わかった・・・。私は慎重にあたりに気を配る。
先程からあたりを凄まじいスピードで飛び回っており、目の端で捉えるのが精一杯だ。とてもじゃないけど、「ダリ、右!」などという暇がない。
そうは言っても、それでは埒が明かない。なんとかして捉えようと努める。

『壊さないで』
 『壊さないで』

囁くような声が聞こえる。
何?どういうこと?

「綾音・・・怪異はどこだ?」
ちょっと待って・・・、まだ捉えられないよ・・・

『壊さないで』
 『壊さないで』

まただ、さっき部屋にいたときよりはっきり聞こえる。
なんだか、寂しげで、そして、切ない声だ。
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