第23章 隋珠和璧(ずいしゅかへき)
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私が応接セットに残ったお茶器を片付けている横で、土御門様はソファにもたれるようにだらしなくふんぞり返っている。その姿をチラと見て、瀬良は小さくため息をつく。
この人、普通にしてればカッコいいんだけどなあ・・・。
「土御門様、だらしないですよ。ここ、一応職場なんですから」
「ええやん。とりあえず期待の新人、リクルートしたんやし、今日の仕事、これで終わりでもええくらいやん?」
「まだ、終わってないじゃないですか」
お茶器を流しに運び、今度は机を拭く。ここは共用の応接室なので、キレイにしないと後で庶務係から怒られることになる。
「ああ・・・綿貫亭ねぇ。大丈夫でしょ・・・綾音はんたちなら」
「本当のこと、言わなくてよかったんですか?」
「うーん・・・この件については、言わへんことになってもうたしな。まあ、かなりこっちから無理言うたからな・・・本庁のお偉いさん説得するのに。ここまでが譲歩の限界・・・やってんな」
一応交渉はしたのか・・・。その上で、彼らには何も言わないと決定した・・・ってことか。いかに土御門様とはいえ、組織に属している以上、上の意向を完全には無視できないということか。
「綿貫亭、これまでに三組の入居者が全員数日で怪異に遭遇。祓いにチャレンジした職員は多いものの、霊障で入院する者が数知れず・・・。3年前のリフォーム時には、業者の親類までもが『幽霊を見た』と騒ぎ、その後始末だけでも結構な手間暇がかかった・・・。陰陽寮随一のいわくつき物件・・・ですよね?」
「まあなぁ・・・処分しようにも取り壊すことすらできへんかってん。正体わからへんねんな、あっこにおるの。そのわけわからんのの始末と入庁試験を兼ねるってのが、今回、綾音はん達を迎えいれる条件やってんな・・・。」
彼は指先で頬をかく。
「それだって、『何も言わずに向かわせる』なんてことしなくても・・・」
机を拭き終わり、台ふきんを手にしたまま土御門様の方を見る。
「お偉いさんの中には、まだあの子らの実力を信じてないやつもおるみたいや。探査性能、戦闘能力、その他諸々、一気に見るための実技試験っちゅーわけや。」
いやらしいキャリア連中の考えそうなことだ。