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天狐あやかし秘譚

第20章 往事茫茫(おうじぼうぼう)


「あれが・・・女怪?」
大きく、肩で息をする。もう少しで、もしかしたら私も、女怪になってしまっていたのかもしれない。そうならなかったのは、この糸とそれから清香ちゃんや芝三郎のおかげだ。

「綾音・・・」
声がした。ゆっくりと顔を上げて振り返る。私がうずくまっているすぐそこに、いた。

ダリだった。
そっと、私を抱き起こしてくれた。

「済まない・・・。守ると言いながら、また、主に守られた」
「ダリ・・・私・・・私・・・」
優しい顔、瞳、声・・・会わずにいたのはたった1日なのに、その何もかもが愛おしかった。
「来てくれると、思っていた」
そのまま、そっとダリは私に口づけをした。
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