第16章 鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)
「いかがですか?綾音様」
瀬良が話を戻す。
え?いかがかって・・・そりゃ就職口も探していたけど・・・いきなりそんな宮内庁だなんて・・・。あまりにも突然過ぎる。私は逡巡してしまう。
「綾音はんにとって、悪い話やないと思うで?陰陽寮は宮内庁所属、つまりは国家公務員。しかも陰陽師待遇やから給与もバーンと出るし、希望すれば寮付属の家を住居に提供もできっで?それに、今回は曲がり神、狂骨の祓えに寄与したちゅうことで特別法の適用もあって、まあ、つまりはボーナスみたいなんも払えるってわけや。これで借金もチャラ。一気に人生逆転、大チャンスやで?」
な・・・なんですと!?
現金なもので、お金の話が出て、一気に気持ちがぐらっとくる。
「ち・・・ちなみにお仕事というのは?」
「はい、仕事につきましては、綾音様の能力に応じてになりますが、これまでの実績から退魔、ということになると思います。陰陽寮祓衆(はらえしゅう)に所属していただくことになるかと。」
はらえしゅう?
「まあ、妖怪出てきたらぶっ飛ばしてもらえやええねん。あんさん、得意やろ?」
ちらっと土御門がダリを見る。ダリは私を見た。
・・・要するに、妖怪退治をする代わりに給料と住居が?
ど・・・どうしよう・・・。
「失礼ながら、迷う余地はないかと・・・。」
あう・・・そうなのだ。私には多分、選択肢はない。ないのだけれども・・・。
「ちょっと・・・考えさせてください・・・」
やっぱり即断できない。あまりにも話が非現実的過ぎる。
「まあええわ。ゆっくり考えて。これ、わいの名刺やから、心決まったら電話して、な?」
ピリリリリ・・・
瀬良さんの持っているスマホが鳴った。失礼、と言い、瀬良が電話に出る。「はいはい」「わかりました」などの受け答えをしているが、様子が少々色めきだっていた。
通話を切った後、瀬良が土御門に何やら耳打ちをする。
「ほう」
土御門が一言つぶやき、私達をちらっと見た。一瞬思案の挙げ句、こう言った。
「あんさんらが助けた例の女、河西佳苗が、たった今、病院から逃げ出したで」
次のセリフに、私はゾクリとした。
「女怪に・・・なりかかっとるってさ・・・。どうする?一緒に来て、助ける?」