第113章 実事求是 (じつじきゅうぜ)
実際、土門は驚くほど軽かった。
この小さな体で、あのエネルギー・・・一体どこから湧いて出て来るのか、不思議だな・・・
そんな風に思っていた。
「さ、帰りましょう」
そう言ってバーをあとにする。表通りに出て、中央通りでタクシーを拾おうとすると、ぐいっと後ろから首を絞められる。
「ぐえっ!」
しまった、変な声が出た。
「な、何するんですか土門様!」
「イーヤっ!嫌なのです!・・・宝生前さんとバイバイしたくないのです!私は今日すっごくがんばったのれす、だから、ホテル・・・私もラブホテルに行きたいのれす・・・!」
そう言って、土門が私の背中でジタバタと暴れ出す。
いやいやと可愛く言う彼女
バーカウンターで突っ伏して寝ていた幸せそうな顔
江藤を前に真実を告げる凛々しい姿
朝食のときに私に向かって甘えを丸出しにしていた、あの表情
いろんな彼女が私の頭の中を一気に駆け巡る。
背中に感じる彼女の体温
耳にかかる少しお酒の匂いのする甘い吐息
自分も多分、酔っ払っている。
すごく、すごく酔っている。
だからだと、自分を納得させることにした。
この日、私は初めて女性とラブホテルに行くことにしたのだった。