第119章 死中求活(しちゅうきゅうかつ)
「じゃあ、私が右に走るから、左に走るの!いいわね!?」
とにかくここから・・・母からあいつを引き離す!
「行くよ!」
私と女の子は弾かれたように左右に分かれて走り出した。獣は一瞬、動揺したように私たちふたりを目で追っていた。どちらを追うべきか、と考えたに違いない。しかし、迷ったのもほんの数秒程度だった。彼は、その時にひときわ自身を引き付ける存在・・・すなわち私、なのだが・・・を追うことに決めた。
ぐいっと頭をこちらに巡らせ、四本の長い手足を奇妙に動かしながら、こちらに向かって来た。ちらりと見ると、先程の女の子は、反対方向に向かって走っていっていた。
お願いね・・・助けを呼んできて。
足にぐいと力を込めて、私は闇の中、走っていく。あの女の子が無事に結界を抜け、陰陽寮の誰かを呼んできてくれることを信じて・・・。