第113章 実事求是 (じつじきゅうぜ)
大抵の人は自分の有利になる未来を知りたいとか、敵の弱点を知りたいとか、そんなことばかりを考えている。もっと直接的には、これとこれ、どっちの株が値上がりするか、なんてことを聞いてきた親戚もいた。そんな人がそばに来ると、見ようと思わなくても、その汚らしい魂の色が目に飛び込んでくる。欲にまみれた人間の魂の色は大抵くすんで、濁っていた。
なので私は、その色を見るだけで、気分が悪くなるようになっていたのだ。
できるだけ、人とは関わりたくない。
たった8歳にして、私はそんな結論に達しており、人前に出ることを極端に嫌がるようになっていた。
そんな私を見て、両親は、私に家の『離れ』をあてがうようになった。学校に行く必要もないと言われていた私は、日がな一日をそこで過ごすようになっていた。一人の時間は良かった。人の醜い部分を見ることもない。嫌な気分にさせられることもなかった。少し寂しくはあったけれども、四季移ろう庭を眺めたり、空に浮かぶ雲を数えたり、好きな本を読んだりして時間をやり過ごしていた。
ただ、今日みたいな両親が主催するこの『託宣会』だけは別だった。月に1度開かれるこの会には、父親や母親が縁故を有している人たちが列をなして集まってくる。この日ばかりは仕方がない。私は父に言われるがままに、占いの力を存分に発揮せざるをえなかった。私が占った結果を、父が参加者に告げる。そんな形で会は進む。人前に出ない分、負担は前よりは減ったが、やっぱりしんどいことはしんどかった。それでも、世話になっている分、父母の頼みは断りにくい。
今は、その託宣会の午前の部が終わったところだった。午後の部までの間は、やっと私に与えられた休憩時間だった。
やれやれ、やっと一人で過ごせる・・・
そんな風に思って縁側に座っていた時、その男性が来た、というわけだ。
近くに来ないでほしいと思ったけれども、父の客の関係者だ。無礼な態度を取ればあとで父母に迷惑がかかる。幼いながらにそう思った私は、とりあえず黙っていた。
『君には、この空がどう見えているの?』