第113章 実事求是 (じつじきゅうぜ)
その人は、後ろ手に縁側に手をついて空を見上げながら言った。その言葉がちょっと意外で、私はその人の方をまっすぐに見てしまった。こうなると、当然その人の魂の色が目に飛び込んできてしまう。しまった、と思って、目をつむりかけたが、すぐにあれ?と思った。
その人の魂の色は、きれいなブルーだったのだ。
それが、あまりにもきれいなブルーだったので、思わず私は彼のした質問に答えてしまっていた。
『普通・・・だと思うけど』
普通に青く見える。そういうつもりで言った。
『ふふ・・・ボクの普通と君の普通が同じかどうかなんてわからないよ?』
変なことを言う。私が見ている世界が、何かおかしいとでも・・・
そこまで思って、はっと気づいた。
そうか、私が見ている世界は、この人とは違うかもしれない。
普通の人には魂の色も、未来も、視えていないのだ。
『普通がいい』
本当にそう思った。『普通』の人みたいに余計なことが視えなければ、もっと他の兄弟とかと同じように、私も無邪気に、子供らしく遊んでいられたように思うから。
『視えすぎるのはイヤ』
つい、本音を言ってしまっていた。
その人があまりに静かに耳を傾けてくれていたから。
自分が持って生まれた、視えすぎてしまうこの『目』が大嫌い、ずっとそう思っていたから。
私が俯いて言うと、男性は優しく笑った。
『うん、大変なこともあるよね、きっと。ボクには想像もつかないところもあるけれども・・・。でもね・・・』
その後に続いた言葉は、まるで早春の爽やかな風のように、私の心を吹き抜けていった。