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天狐あやかし秘譚

第113章 実事求是 (じつじきゅうぜ)


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【実事求是】個別的事例について真実を追求すること。
実際に起こったこと、本当のことを知ることってとっても大切、みたいな。
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『隣に座っても、いいですか?』

その男性は父の客の連れだった。確か助手だ、みたいに紹介されていた人だった。大抵父のところに来るのはおじさんかおばさんばかりだったけれども、この人は若い・・・、多分、高校生くらい?だから覚えていた。これまでも、何度か話しかけられたり、話をしたりしたことはあったけど、特段仲が良かったわけではなかった。

その人は、託宣の合間、疲れて縁側でボケっとしていた私の横に、なんだか自然な感じで座ってきた。

彼が親切にしようとしてくれているのはなんとなく分かった。しかし、どうしても『人間』というものが信じられなくなっていた私は、つい、そっぽを向いてしまう。

そして、しばらくの間、その人は黙って私の隣に座っていた。

季節は早春。空はよく晴れていた。
広大なうちの敷地にある庭には、梅の木があって、仄かに甘い匂いを運んできてくれている。遠くで、鶯が鳴く声が聞こえてきた。

『疲れちゃいますよねぇ・・・』

ポツリとその人が言う。なんだろう?一体、何がしたいのだろう?
どうせ、また私を利用したいだけでしょ・・・そんな思いが頭をよぎった。

物心ついたときから私は霊なるものを知覚する力、『霊覚』が強かった。もともと、私の一族は見えないものを見る力に優れていたらしいが、その中でも私は群を抜いていると言われていた。しかも、占術の才も飛び抜けており、この家に代々伝わる占術も遊び感覚であっという間に習得してしまった。小学校に上がる頃には、私の占術の精度は他の追随を許さないほどのものになっていた。

私のこの才能が知れ渡ると、すぐにそれを利用しようとする大人たちが群がってくるようになった。

最初は褒められるのが単純に嬉しくて嬉々として占っていたところもあるが、その内、彼らの心根の汚い部分がよく見えるようになり、嫌気が差してきてしまった。私が占いをすることを渋ると、今度はその心根を姑息に隠して、手練手管を使ってこちらの機嫌を取ろうとしだす。私にはそれが透けて見えてしまう分、余計に嫌悪感ばかりが募るようになった。
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