第106章 貪愛瞋憎(どんないしんぞう)
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日暮たちが式神を放ってから、あっという間に数時間が経過した。多体勧請の負担がかなり心身に来ているのか、屋上の中央で祈りを捧げるような姿勢で両手を汲んでいる日暮の額にはじっとりと汗が滲んでおり、唇からは血の気が引いているようにも見えた。
その背後で九条もまた、20羽以上の白鷺姫からもたらされる膨大な視覚情報を処理するために、目を閉じて膝立ちで座りつつ意識を集中させていた。
・・・見つからない・・・見つからない・・・
どこ?どこにいるの御九里さん・・・
次第に焦りが募ってくる。もしかしたら疾うの昔に仙台市から出てしまっているのかもしれない・・・。そんな気持ちすら湧いてきてしまう。そんな連想をすると、胸の奥がざわざわとしてきてしまい、落ち着いて考えることができなくなってくる。
いけない・・・集中しないと・・・
日暮の猫神は術者の意識から完全に独立して自律的に動くので、術者が意識を失おうがどうなろうが活動を続けることができるが、猫神からの『返信』を受け取るためにはそれなりの集中が必要だ。今の日暮は、全身の霊覚を最大限に高め、仙台市中に散った猫神の声を聴こうとしていたのだ。