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天狐あやかし秘譚

第106章 貪愛瞋憎(どんないしんぞう)


「当たり前です!いいですか?御九里さんは今、土門様さえ呪的に補足することができないほどの完璧な『八門遁甲の陣』を使っているんです。ならばどうするか?方法はひとつです!目です!物理的に、光学的に補足するんです!私のニャンコ先生、そしてあなたの白鷺姫、大地と空、2つの方向から探す・・・これが最も合理的な方法です!」

は・・・はあ・・・

あまりの日暮の剣幕に押され、九条は渋々白鷺姫を勧請する。最初遠慮がちに10羽ほど呼び出した所、日暮がギンと睨みつけてきて『九条さん・・・20羽はいけるの・・・私、知ってるんですよ!?』等と言う。上司たる土門譲りの千里眼ぶりに九条が『ひぃっ』と顔を青ざめさせる。

「わ・・・わかりましたよ・・・」

更に符を10枚使い、合計で23羽の白鷺姫を呼び出した。これが今の九条の限界である。若干顔色が悪くなった九条の周りを、純白の鳩のような見た目の式神・白鷺姫がバタバタと飛び回り、やがて仙台の空に散っていった。

「あ・・・あの・・・私は別に式神とか使えないので、これにて休憩ということで・・・」
田久保がそっと後ずさろうとすると、日暮が今度は田久保をギロリと睨みつける。

「何を言ってるんですか!あなたはその情報収集能力を買って来ていただいたんです・・・その足で、その目で、その耳で・・・情報を集めていらっしゃい!!!」

幻覚かもしれないが、田久保の目には、日暮の背後に闘気にも似た猛々しいオーラが見えていた。それに気圧され、思わずコクリと頷く。

「分かったらさっさと行く!!」
「は・・・はいぃっ!!」

脱兎の勢いで、田久保は塔屋から転がり落ちるように階段を下っていった。

日暮は、強い決意を込めた目で仙台の街を見渡す。その胸には、熱い熱い愛の炎が燃え上がっていた。

どんな困難があったとしても、この胸に滾る愛の炎があれば、私は負けることはありません!・・・待っていてくださいね・・・御九里さん・・・必ず、必ずこのミスリンがお助けいたします!

メラメラと瞳に炎を宿し、ぐっと力強く拳を握りしめる。

その異様なオーラを遠目に見て、九条は『来るんじゃなかった』と心底思い、深い溜息をついていた。
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