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天狐あやかし秘譚

第106章 貪愛瞋憎(どんないしんぞう)


☆☆☆
「鬼々夜叉神 太陰 生門 荒御魂来世!
 おいで!にゃんこーず!!」

「「にゃあああっ!!!」」

日暮がバサリとばらまいた符の一枚一枚が空中で黒猫に変わり、瞬く間にそこらじゅうが黒猫だらけになる。

ここは仙台駅から徒歩10分ほどのところにあるビジネスホテルの屋上である。メンバーをそこに導くと、日暮はおもむろに自身の式神である『猫神』を多体勧請した。

「にゃんこーず!隠密モード、起動!
 そして・・・いい!?あなた達の役割は御九里様を探すことよ!
 この街に必ずあの人はいるから、草の根分けても探し出すのよ!」

気合の入った日暮の声に、にゃんこーずがそれぞれ『にゃ!』と短く応えた。そして、普段は誰の目にも普通の黒猫として映るその姿が、すーっと薄くなり消えていく。今や屋上にひしめき合う黒猫たちは呪力のない人間には不可知の存在となっていた。

これこそ、日暮の式神『猫神』の真骨頂である。ただでさえ、猫神は自律的に活動し、かつ、針の穴ほどの隙間があればどんな空間にも侵入できる。しかも、今はその姿を消して一般人には見えない状態にしている。これならば、街中で人を探すのなど容易いことである。

「ず、随分・・・気合入っていますね・・・」

多分、日暮は一度に勧請できる最大数の猫神を呼び出したと思われる。いまだかつて見たことのない数の黒猫の群が、彼女の指令ひとつで屋上から次々に街に飛び出していく様は壮観と言っても良かった。

ただでさえ難しい多体勧請をこれだけの数こなすとは、さすが『属の一位』の位階を持つだけのことはある・・・そんな風に九条が半ば感心、半ば呆れていると・・・

「何をぼさっと見ているのです!?あなたも早く、白鷺姫(しらさぎひめ)を出しなさい!空からも探すんです!」
「ええっ!ぼ・・・僕もやるの!?」
自らを指さして、九条は不満の声を上げる。不満なのも当然である。九条もまた式神を複数勧請できる能力を持っているが、多体勧請は通常の式神の召喚と比べて段違いに疲れるのである。
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