第105章 昼想夜夢(ちゅうそうやむ)
ここは、東京都某所にある日暮美澄の住む官舎の一室、その中の彼女が書斎兼ベッドルームに使っている部屋だった。ベッドがあるサイドの壁面には、ところ狭しと『展示用』のアニメキャラのポスターが張られている。目を転じて、反対側の壁を見ると、そこには大きな本棚が据えられていて、マンガ、アニメの設定画集、ピンクや白の背表紙の文庫本などがぎっしりと詰まっていた。
机の上にはノートパソコンが置かれている。今、彼女はこれで自身の新作小説である『月の都ルナリティ』の原稿を書いているところだった。
もちろん、日暮美澄の仕事は『宮内庁陰陽寮陰陽部門占部衆』の陰陽博士であり、しかも、『属の一位』というかなり高い位階を与えられている人物である。副業で小説家をやっているわけでもない。
これは、純粋な彼女の『趣味』なのだ。
小説を書いて、投稿サイトに掲載する。それが日暮美澄・・・通称ミスリンの隠れた趣味のひとつだったのである。
「ガジョー、やっぱりかっこいい・・・」
ポツリと呟いてから、また頬がぽっと赤くなり、そして顔を枕にグリグリと押し当てるように悶えていた。
この小説、設定している舞台こそ中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジーの体裁だが、出てくる登場人物には自分自身を投影しまくりであった。
主人公であり、王国最強の魔術師であるミスリルには、自分自身を
そのミスリルに愛の告白をし、颯爽と助けに来た騎士ガジョーには『御九里牙城(みくりがじょう)』を
彼女の脳内にある映像では、それぞれの像がバッチリ当てられていた。
日暮の脳内で、物語はさらに展開していく。
『そう・・・ガジョーは安心して気を失ったミスリルを横抱きにすると、一足飛びに地底の国から脱出する・・・。そして、そのまま月影の下、森の中を疾走して、彼女を王宮まで連れ帰って・・・そして・・・』
まるで月の光をそのまま固めたような白亜の城。
その中にある王宮守護の騎士のために用意された部屋の天蓋付きのベッドに、ミスリルはそっと横たえられる。
室内に満ちる月の光が、ミスリルの頬を水底の青に染める
小さな寝息をこぼす唇
心配そうにその顔を見つめるガジョーの深い、深い愛に満ちた優しげな瞳
誰に聞かせるともない、愛の言葉を囁いて・・・
唇が・・・唇が・・・そっと・・・
「きゃあああああ!!!!」
