• テキストサイズ

天狐あやかし秘譚

第104章 追奔逐北(ついほんちくほく)


☆☆☆
【上述の衆会議から3日後 仙台駅の駅舎屋上にて】

暗く沈んだ夜。

つい昨日まで降り続いていた雨は、今はすっかり上がっている。6月に入って温度が上がり始めていたが、適度な湿り気のおかげか、少し過ごしやすくなっていた。

駅舎の屋上という、一般人は立ち入ることができないところに御九里は立っていた。黒尽くめのパンクファッション、小さめのバックパック。そして、1メートルはあろうかという刀剣袋を肩にかけていた。

彼の目は眼下に散らばる星屑のような街明かりを見つめている。

『やめて!』
幼い男の子の声が、頭にリフレインする。瞬間、ツキンと頭の芯が痛む。御九里は左手で手すりに掴まり、右手で頭を押さえた。

記憶の断片が逆流してくる。

目の前に真っ赤なスクリーンがかかる
悲鳴、怒号、肉を切り裂く気持ちの悪い音
何かをかき回すようなぐちゃぐちゃという音と
すすり泣き、許しを請う弱々しい声

手足が震え、冷たくなる
目を見開いて閉じることができない

壊れた窓の外に浮かぶ
真っ赤な月

クソ!

ガン!と拳で一度、手すりを殴りつける。二度、そして、三度。御九里の力に耐えきれず、金属の桟がぐにゃりとひしゃげる。

はあ、はあ・・・はあ・・・

冷や汗が流れ、
瞳孔が盛んに拡大と縮小を繰り返す。
ギュッとひしゃげた手すりを握りしめる

「やっと・・・見つけた・・・今度こそ・・・」

そこまで独り言のように言うと、一度唇を噛んだ。
決心したかのように、顔を上げると、ギュッと刀剣袋の肩掛け紐を握りしめる。

今度こそ・・・殺す・・・

その目には、並々ならぬ決意の色が滲んでいた。
/ 1414ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp