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天狐あやかし秘譚

第105章 昼想夜夢(ちゅうそうやむ)


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【昼想夜夢】昼も夜も、常に好きな人のことを考えてしまうほど、強く恋焦がれていること。
こんなに好きだと、全然眠れない!!みたいな。
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『やめて!』

宮廷魔術師のミスリルは、下卑た笑いを浮かべたリューズ軍の鬼兵達を睨みつける。しかし、その言葉に何の力もないことは、鬼兵たち皆が分かっていることだった。

ルナリティ王国随一の魔法力を有する彼女の力の源は月の光。しかし、ここ地底の魔国であるリューズには陽の光も月の光も射すことはない。力の根源を奪われ、しかも後ろ手に縛られた状態では、いかにミスリルとは言え、ただただ、この醜悪な欲望をたぎらせる人外の存在、王国の敵である『鬼』たちの、文字通り餌食になるのを待つだけだった。

『へっへっへ・・・こんなにいい女を食えるとはね・・・』
『お、俺は足を貰うぞ』
『オデは・・・腕だ・・』

べろりと長い舌で唇を舐める。半裸姿の彼らの皮膚の色は、まるで淀んだ沼のようだった。太い腕、頭の両脇から突き出した歪んだ角、そして、上下に鋭く伸びた鋭い牙が、彼らが人類とは異なる魔界で生まれた異形の存在であることを示していた。

ミスリルを守るものは、もはや魔術師の正装であるペイルブルーとパープルに彩られたローブのみだった。ジリジリと、鬼たちは彼女を追い詰めていく。やろうと思えば一息にその喉を切り裂けるのに、わざといたぶっているのだ。

ーなんて醜い・・・!

ギリッと身を捩り、縛られた腕をなんとか解放しようとするが、固く結ばれた麻縄はびくともしない。魔法力が満ちていれば白銀に輝いているはずのミスリルの瞳は、深い海の色に染まっており、その力の枯渇を示していた。

ニヤニヤと笑いながら、鬼たちがゆっくりと手を伸ばしてくる。あの手に掴まれてしまえば、異形の者の持つ膂力であっという間に全身を引き裂かれてしまう。

ーこんな・・・こんなところで・・・!

この時、彼女が思い浮かべたのは、ある騎士との思い出だった。
強く美しい騎士が、青い月明かりの下、彼女の前に跪き、結婚の申込みをしてくれたのだ。その時見せた彼の優しい笑顔が脳裏をよぎる。

ーごめんなさい・・・帰ったら、無事に帰れたら・・・返事をしようって思っていたのに!
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