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天狐あやかし秘譚

第102章 能鷹隠爪(のうよういんそう)


ぎゅっと目を瞑って念を込める。

「馬鹿な!俺がその術式を開発するのに何年かかったと・・・!!」

壁際でぐったりしていたニャンコ先生が、術式の影響でこちらに吸い寄せられ、私の身体の中に入り込んできた。しなやかなニャンコ先生の魂を体内に感じる。

ーぎいやあああああ!!

それとともに、断末魔の声を上げ、色情霊が追い散らされる。
当然だ。強い霊力を持つ式神が同じ土俵に立ったのなら、そのへんに漂っている色情霊に負けるわけがない。私の中に入り込んだニャンコ先生のお陰で、私はその魂の座を完全に自分のものとして取り戻した。

「貴様!何をした!」

変化はこれだけじゃなかった。ニャンコ先生の霊力が私の霊力と響き合う。力が、野生の力が私の身体にみなぎってきた!

私は立ち上がる。全裸の身体を黒い体毛がびっしりを覆い出す。ニャンコ先生が私に憑依した結果だ。通常の動物霊よりも強い式神の力を取り込んだため、身体にも影響が出たのだ。腕と足の筋肉が発達し、目が釣り上がり、夜の闇でも見通せるほどの力を得る。指先の爪が長く伸びて尖っていく。お尻のあたりにフルンと揺れているのは多分、しっぽだ。

な、ん、で、も・・・できる!!!

ギン!とその黄金の目で鴻上を睨みつけた。鴻上は何某かの術式を発動しようと印を切っていたが、それが発動するより疾く、私はベッドを蹴り、一瞬の内に鴻上のこめかみをその足先で撃ち抜いた。

「ぐはあっ!!」

横面を叩かれ、大の男の身体が思いっきり壁にすっ飛んでいく。

身体が軽い。戦闘力が普段の50倍くらいにはなっているぞ!
これこそ・・・私とニャンコ先生の合体技!

「式神合体!綺羅羅黒猫戦乙女(ブラックキャット・ヴァルキリー)!!」
「なんだ、そ・・ぶっ!」

おそらく、何だそれは、とでも言おうとしたのだろうが、言い終わらない内に私の膝蹴りが顔面にめり込んだ。鴻上は完全に沈黙する。

よし・・・あとは・・・・

その後、夜の船上、人身売買組織の一味達の上空を月明かりをバックに、正体不明の黒猫が舞い狂うことになる。
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