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天狐あやかし秘譚

第12章 甜言蜜語(てんげんみつご)


お風呂の中で手をにぎにぎする。
なんだろう・・・居場所があるって感じ、なのかな?

でも、その後は大変だった。
変な和食屋に迷い込んで、トイレ行こうとしただけなのに、いろんな怪異に遭遇した。

なかなか追いつけない店員さん、
髷を結った男の生首にアソコを舐められていた女性、
顔だけが女の蜘蛛、
大声で笑いながら追いかけてくる般若の顔、
そして、大鬼・・・

考えてみれば、あれ全部、芝三郎が化けていたんだよね。化け合戦、とか言っていた。どうやら、化け狸である芝三郎は、妖怪を引き連れている私を『強い人間』と勘違いし、化け比べを挑みたかったらしい。

迷惑なヤツ・・・。

それで、結局は、ダリが自分を守ってやられちゃったと思いこんだ私が、芝三郎をダリの槍、に見せかけられたモップの柄で思いっきり叩くことになる。最後は物理攻撃にて化け比べは私達の勝ちになったのだ。

いやいやいやいや・・・色々ありすぎだろう。
またしても心の中に神様への文句が湧き上がってくる。

それに、一番許せないのは・・・。あ、ダメだ、思い出したらまた腹が立ってきた。

気絶した芝三郎を前に私が呆けているときの、あのダリの表情!
大笑いするわけでもなく、いたずら成功して喜ぶでもなく、ふいっと横を向いて、失笑するあの顔!!

めっちゃバカにされた気がする!!!

そうなのだ。ダリはあの変な和食屋を見つけたときから、あれが狸の仕業だと気づいていたのだ。その上で、『面白かったでな。様子を見てみた』と。その後、言うに事欠いて、

『それにああいうのを、人の子は『えんたーていめんと』というて楽しむのではないのか?』

などと言う。

ざけんなよ!
まったく・・・まったく・・・ダリのやつ!

「私の純な乙女心に、責任取れってのよ!」
思わず、ひとりごちしてしまう。
口を沈めて、ブクブクと息を吐く。

「それが・・・主の望みなら」

ひゃああ!

突然声をかけられて、びっくりする。振り向くと浴室にダリが立っていた。
全裸、狐神モード。
そして、その股間には立派な屹立が・・・。

ぎゃあああ!

「な・・・何してるのよ!ダリ!」
再び顔を半分まで湯船に沈め、せめてもギュッと胸を両手で包むように隠し、足をすぼめる。
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