第12章 甜言蜜語(てんげんみつご)
芝三郎が狸のぬいぐるみに化け、ダイニングテーブルの椅子の上で眠ることになった。別に狸の姿でもいいのだが、本人曰く、
「寝相が悪いゆえ」
とのことだった。要は狸の姿だと落っこちるらしい。
まあ・・・いいか。
風呂は風呂で問題だった。
とりあえず、私がまず清香ちゃんと一緒に入り、体や髪の毛を洗ってあげる。お風呂に浸かっている内に、素早く自分も簡単に汗(と、あとちょっと漏らしたのでアソコ)を流す。清香ちゃんが一生懸命に湯船で10まで数えているのは可愛かった。
その次、芝三郎が、シャワーとなったのだが、
「綾音殿・・・風呂の使い方が全くわからん」
ということだったので、またひとつため息。ダリが入れてくれれば・・・と思い、ちらっと見るが、すっと目をそらしやがる。
しょうがないので、芝三郎には狸姿になってもらい、更に目隠しをして、やっぱり私がガシガシ洗う。
「はああ!さっぱりしたでござる!できれば、目隠しがない方が・・・」
などと言っているので、力いっぱいタオルでゴシゴシ拭いてやった。
「いだだだっだ!綾音殿、痛いでござる!」
まったく!乙女の柔肌なんだと思ってるのよ!
てんやわんやの末、やっと芝三郎がぬいぐるみ姿で眠りにつき、清香ちゃんがベッドで大胆に大の字に眠りにつく。
こうして、やっとのことで私がゆっくりできる番になったというわけだ。ぬるくなった風呂を追い焚きする。ダリは狐モードでベッドで丸くなっているので、放っておく。
ちなみにダリはめったに風呂に入らない。別に不潔でもないし、臭うわけでもないので本人の好きにさせている。どうやら妖力でどうとでもなるらしい。
やっと静かになった家。ちゃぽんと、湯船に浸かる。
はあああああ・・・・。
ほんっっとぉに、疲れたぁ・・・・。
温かいお湯に今日あった色々が溶け出していくようだ。
清香ちゃんの服をたくさん買ったなあ。なんか、まるで自分が本当の『まま』になったみたいだった。いろんな服を楽しそうに着るから、ついつい、お金もないのにいっぱい買ってしまった。
ダリと清香ちゃんを挟んで一緒に歩くの、なんか、なんかちょっと素敵だった。ちっちゃくて温かい手がぎゅーっと自分の手を掴む感触が、なんだか愛おしかった。