第11章 針小棒大(しんしょうぼうだい)
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周囲を見回すと、私達は料亭の中でも、山の中でもなく、大きなガランとした倉庫のような建物の中にいた。見ると、少し離れたところに扉があり、その向こうにはアウトレットモールが見える。
何のことはない。モールの中にある使用されていない倉庫の中にいるのだ。おそらくイベントができるような会場を作る予定でもあったのだろう。ガランとしている。
「え?・・・何?なにこれ?どういうこと?」
手に持っていたと思っていた槍は古いモップだった。
な・・・何が起こっているの?
しばし私が呆然としていると、たぬきが目を覚まし、二本足で立ち上がった。それだけでもびっくりだが、そのままムンと両の手で印を結ぶと、姿が一瞬ぼやけ、あっという間に小学校低学年くらいの男の子に変身してしまう。その姿はまるで元服したての小さな侍といった出で立ちだ。腰にはしっかりと太刀と脇差しが刺さっている。
その小さな侍はおもむろに私の前で土下座をした。
「大変、申し訳ございませんでしたあああ!」
はい?
あまりにも非現実的な光景だ。東北の曲がり神も、公園の狂骨もびっくりだが、目の前で狸が二足で立ち上がり子どもに化けるのは、別の意味でびっくりだった。
「えっと・・・君・・・何?」
なんだ、これ、この生き物は?
「拙者、生国は淡路の国、名を芝三郎と申す化け狸でござる。故あって父母の元を離れ、流れ流れて東の国に参り候。さまようこと幾星霜、法力坊主に封じ込められ、長きに渡り身動き取れず、この度、やっとのことで解放され、やれ自由の身じゃと喜んだのもつかの間、面妖なる装束の人々、あやしき家々に取り囲まれ途方に暮れたるところに、ああ懐かしきあやかしの気配。そのあやかしを使役しており、綾音殿を強者と見込み、ついぞ化け狸の血が滾り化け比べを挑んだものの、完膚なきまでに拙者の負けでござれば、ああ!何卒、何卒、命ばかりは・・・おーたーすーけーあーれー!!!!」
芝三郎と名乗った化け狸は、ゴン!と床に頭を擦り付けんばかりの土下座を何度も行った。