第11章 針小棒大(しんしょうぼうだい)
状況がよく飲み込めないが、要は、さっきの大きな和食の店も、奇妙でエッチな侍の生首も、下半身蜘蛛の妖怪も、のっぺらぼうも、顔だけの般若も、大鬼も、あの妖怪は全部こいつの仕業だということだけはわかった。
なんか・・・腹立ってきた。本当に、本当に、びっくりしたんだから!!!
「あんた・・・一体何の恨みで!!!」
私が凄むと、芝三郎は心底怯えたような顔をする。
「ひいい!!申し訳ござらん。化け比べは狸の本懐、人をたぶらかすことは狸や狐の本能でござる。それが証拠に、お連れの狐殿も・・・」
え?あ!そういやダリ・・・鬼の足に踏み潰されたと思ったけど?
後ろを振り向くと、ダリが清香ちゃんを起こしてパンパンと身体についたホコリを祓ってやっているところだった。当然、口元に血がついていることもない。
まさか・・・?
思い出す。そもそも、あの店に入ろうとした時・・・
『綾音・・・本当に、ここでよいのか?』
『え?別に良いと思うけど。』
『そうか・・・まあ、主が良いのなら・・・』
それから、店員さんに向かって・・・
『おい、主(あるじ)よ・・・』
『ここのは、本当に食えるのか?』
私がトイレに行くときも・・・
『本当に、大丈夫なのか?』
まさか・・・まさか・・・まさか!!!!
ギン、とダリをにらみつける。
「まさか・・・ダリ・・・最初から・・・分かっていて?」
ダリがふと視線をそらすように横を向く。ついで、
フッ
小さく笑った。顔こそ冷静を装っているが、尻尾が背中の向こうで楽しそうに跳ねている。
こいつ・・・こいつ、こいつ、こいつ、こいつ!
おしっこ漏らすほど怖かったのに!
本気でダメかもって思ったのに!
心配して、本当に心配して、一生懸命守ろうとしたのに!
「ダリの・・・・ばかああああ!責任、とれえ!」
大きな倉庫に、乙女の怒声がこだました。