第11章 針小棒大(しんしょうぼうだい)
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「いーーーーーやーーーーー!!!!!」
一直線に無限とも思えるほど続く廊下を、私は一目散に駆け抜けていた。
なぜって?
後ろ!後ろ!後ろ見てぇ!!
私の後ろには、があっと大口を開けた1メートルを超える巨大な般若の顔面がケタケタと笑い声を上げながら追いかけてきているのである。
先程来、あれに追いかけられ、必死に逃げている、という状況だ。
「ダリー!!!ダリダリダリ!!!!」
呼ぶが、一向に来る気配がない。
それに、これ、この廊下!延々と左右に『桔梗』と書かれた札を掲げる襖が続いている。ありえないほど長い廊下。
これには覚えがある。あの、例の東北の曲がり神の住む屋敷。あれと同じだ。
何かしら空間が歪んでいる・・・つまりは異界!!!
もしかして、異界にいるからダリが私を見つけられない・・・とか?
実は、あの狂骨に襲われた時、ダリがすぐに来れなかったのは、ダリに言わせると「強力な結界があり、探知しにくかった」とのことだった。
結局、あの陰陽師達が張った結界のせいで、ダリは私をなかなか見つけられなかったというのだ。戦闘力はアホみたいに強いのに、探索面はそうでもないようだ。万能、ではないということか?
だから、一体どうやって迷い込んだのかわからないが、私が今いる、この空間もダリの探知能力範囲外である可能性がある。
だとしたら・・・・。
まずい・・・今度こそ、死ぬかも・・・。
ケッタケタケタケタケタ・・・・
ケッタケタケタケタケタ・・・・
気色悪い笑い声を上げ、般若の首が迫ってくる。
も・・・もうダメ・・・もう走れないよぉ・・・。
そう、弱音を吐きそうになったとき、前を見ると、正面に木の引き戸がある事に気づいた。
「で、出口!?」
とてもじゃないけど、左右の『桔梗』の襖を開ける気にはなれない。もちろん後ろに戻ることもできない。だとしたら、もうあの引き戸を開くしかない!
がららら!
引き戸を開き、飛び込んで、バチンと閉めた。そのまま、その場でへたり込む。
もしかしたら般若が扉を破って入ってくるかもしれないが、この時点で私の気力はほぼ限界であった。
閉ざした扉に背を預け、肩で息をし、なんとか整えようとする。
はあ、はあ、ぜえ、ぜえ・・・。
「ん?綾音・・・随分長い雪隠だったな」
・・・・・・・。え?
